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2017525

 

Gender Summit 10
 
Better Science and Innovation through Gender, Diversity and Inclusive Engagement

日時:2017525日(木)

26日(金)

 


会場:一橋講堂(東京都千代田区)

 

 

 

 

 

ジェンダーサミットは、ジェンダー(男女の社会的性差)が、科学にとって重要な要因と捉え、研究とイノベーションの質の向上を目指す国際会議です。2011年より年13回開催され、今回で10回目になります。文部科学省、国立大学協会など国内の約20の府省や団体が後援し、110を超える企業や大学、学会などが協賛しました。

今回のテーマは「ジェンダーとダイバーシティ推進を通じた科学技術とイノベーションの向上」であり23か国から600人近くが参加し7つの主要(プレナリー)セッションとパラレル(サブ)セッション、104件の ポスター発表で構成されました。当室からは、城戸室長と荒木が出席しました。

 基調講演では、IBM最高技術職である浅川千恵子氏が登壇されました。彼女は中学2年生の時に失明し自分に何ができるかを模索する日々を過ごす中、視覚障害者でも情報処理の専門知識を学べることを知り、日本IBMに入社、ホームページを音声で読み上げるソフトウェアを開発し、多くの人に希望をもたらしました。キーボード、テレビの字幕や携帯電話の音声機能は、今では我々の生活に不可欠なものですが、当初は視覚障害・聴覚障害者の方たちのために開発された機能です。「一人一人の異なる人生経験のギャップがイノベーションを生む」、「Make your own perspective your advantage(あなたの視点はあなたの利点)いう言葉の重みに大変感銘を受けました。

 

また、経済産業省の藤澤秀昭氏からは、今春発表された『Diversity 2.0』について紹介されました。この数年で、成長戦略としてのダイバーシティは大きく浸透していますが、その反面、受動的・形式的な対応に陥りがちでした。ダイバーシティを『目的』ではなく、自分の会社(大学)を強くするため、すなわち持続的に経営上の効果を生み出すための『手段』と再度位置づけしたものが『Diversity 2.0』です。女性も頑張っているからではなく『組織の発展に多様な人材の活躍がなくてはならないものであるからと両立支援を進める、または管理職に女性を登用するなどの取り組みが必要であるという思考を、大学内でもっと定着させることが必要です。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本学会の議論の成果は「Tokyo Recommendations:BRIDGE」としてまとめられました。BRIDGE Better Research and Innovation through Diversity and Gender Equality(ダイバーシティとジェンダー平等を通してより良いリサーチとイノベーションを)の頭文字かつ、すべての人をつなぐという「架け橋」の意味を持つそうです。具体的には、国連が掲げる「世界を変えるための持続可能な開発目標」の17項目すべての実践に組み込むべきであるという提言が発表されました。(現在は目標5に掲げられています)

 

 

 

 

今回の学会で、ジェンダー・ダイバーシティを考慮して研究開発を進めることで、男女問わずより多くの人に適したイノベーションが実現し、より多くの人の生活の質の向上へと広がることを再認識しました。また多くの方が「大学(企業)が教職員(社員)の個性を理解し尊重すること」は、言葉で言うほどたやすいことではないと発言しており根気強く取り組むべき課題だと思いました。

日本の女性研究者割合は他国と比較すると低く(20 %)、研究分野における女性進出促進の政策も早急に進められています。STEMScience:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Mathematics:数学)分野の研究に女性参加を促す努力も年々勢いを増しています。

佐賀大学も、若手研究者や外国人・女性研究者を増加させるための取組を行っており、研究者それぞれが自身のバックグラウンドを強みとして活用できるような研究支援を行っていきたいと考えています。

文責:荒木