広報誌「かちがらす」25号

広報誌「かちがらす」25号 page 7/16

電子ブックを開く

このページは 広報誌「かちがらす」25号 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
低平地沿岸海域研究センター教授あら き ひろ ゆき荒木 宏之枯渇資源リンを下水から回収する~ 佐賀大学発の新しい回収技術~リンは生物に必要不可欠な元素です。人間は石油がなくても生きていけますがリンがなくて....

低平地沿岸海域研究センター教授あら き ひろ ゆき荒木 宏之枯渇資源リンを下水から回収する~ 佐賀大学発の新しい回収技術~リンは生物に必要不可欠な元素です。人間は石油がなくても生きていけますがリンがなくては生きていけません。骨の形成に必要というだけではなく、DNAやATPの必須構成元素であり、生物の代謝で重要な役割を果たしているのです。私たちは食べ物を通してリンを体内に取り込んでいます。肥料として与えたリンで米や野菜が育ちますし、牛や豚も肥料をやって作った飼料を食べて育ちますので、リンは食糧生産、つまり人類の生存に不可欠なものなのです。このリンがあと40年で枯渇すると言われています。そのようなリンはわが国では産出されず100%輸入されています。主な用途は肥料です。人間が食べ物として取り込んで利用しなかったリンは排泄物として下水道に集まります。その量はわが国でリサイクル可能なリンの24%(リン鉱石や肥料としての輸入量の14%に相当)になりますので、これを回収せずに海に捨てているのは勿体ないと言えます。下水からリンを回収するためには、低濃度で存在するリンを効率的に集める必要があります。そこで、鉱物の一種であるハイドロタルサイト(HT)とゼオライト(Ze)という吸着材料を使い、HTにリンを、Zeにアンモニアを吸着させた後、脱着再生液の入った別のタンクでリンとアンモニアを取り出しマグネシウムを加えてリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)の結晶として回収します。MAP自体が直接肥料にもなりますし、リン鉱石に代わる原料にもなります。リンとアンモニアを取り出したHTとZeは再生して繰り返し吸着に利用できます。この方法により下水中に存在するリンの90%程度を回収することができます。この新しい技術は大学から特許が出願されました。現在、佐賀の二つの企業(日本建設技術(株)、(株)戸上電機製作所)と実用化に向けて共同研究を進めています。わが国の資源問題解決の一助になればと思っています。HTとZeの構造とリン回収の原理リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)の結晶共同発明者の三島悠一郎センター研究員と共に。佐賀市諸富町の下水処理場での実用化実験の様子。HTとZeが入っているそれぞれのタンクに下水を通してリンとアンモニアを吸着させる。研究紹介6