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と、年賀状にひと言書いてあったのです。その時は、意味は分かっても体感として分かりませんでした。分かったのは卒業後1年間スペインに行き、日本に帰ってきた時です。スペインでは、毎日絵を描いていました。今日描いた絵を部屋に掛ける、次の日描いた絵をまた掛けるということを繰り返していました。それを続けていると部屋中が絵だらけになって、掛けるところがなくなるのです。そうすると気に入らない絵を外すようになる。それを毎日繰り返していました。どんな絵を外していたかを後から考えると「作為のある絵」なんですね。そして1年後日本に帰って来た時にハッと気付いて、深川先生の言葉を思い出したのです。作為があったら「純粋に個人的」ではないんだ、と。「これだ!」と思って深川先生に会いに行き「先生の言葉、感動しました。やっと分かりました。」と伝えました。先生は「僕はそんな言葉は憶えてないな」って言ってましたけど(笑)。つい最近なんですけど、フェイスブックの友達の話の中の一部分に、カール・ロジャース(アメリカの心理学者)という人が〝What is most personal ismost general.?と言っていたというのを見つけたんですよ。(先生の言葉は)ロジャースの言葉から来ているということをほんとについ最近知ったんです。その言葉は、長く、今も一番僕の中で印象に残っています。【これからの夢は?】もっともっとわがままに絵を描きたい、描けたら、と思います。純粋に個人的になるというのは、人が持っている同じ感情に近づいていくことだと思うのです。谷川俊太郎さんとコラボレーションした時に「詩はどのようにして作るのですか?」と聞いた事があります。すると彼は「サラリーマンのようにパソコンの前に座り、仕事として詩を作ってます」「ただ、僕の詩を見た人が、それぞれの人生を投影出来る言葉をさがしてるんですよ」と言われました。ある一つの言葉を見た時に、僕は幼稚園児時代の悲しい事を思い出すかもしれないけど、他の人は大学時代の出来事を思い出し涙を流すかもしれない。場面場面は違うとしても、その言葉が誘発する物が個人個人の人生の中に根付いているものを引き出す。それが芸術の1つの姿ではないか。その言葉を聞いた時に僕はそんな風に感じました。それは深川先生の「純粋に個人的なことは普遍的なことなんだよ」ということにつながると思うのです。【在学生や高校生へのメッセージをお願いします】お金のこととか生活のことを考えていたら、いい絵は描けません。純粋なものではなくて何か別のものが絵に入ってくるんです。それは絶対にだめだと思う。大学の時はあんまりそんなこと考えないですよね。いい絵を描きたいという思いが強いと思います。卒業や就職活動の時期が近まって来ると、それらの事が周りから押し寄せて来て、絵に別のものが入ってしまう。それで一番悩むのは自分なんです。そのときそれを外せるかどうかなんです。どうしようどうしようと悩んでいい。でも絵を描く時にそれを引きずっていては絶対にだめなんです。それは絵に出ます。人に媚びを売ってしまうというか。同様に認められたいという思いも強すぎると、見る人や、選者や、時代に媚を売るようになってしまいます。高校生であろうと大学生であろうとその気持ちを忘れないでほしいです。【佐賀大学にもとめるものは?】学生たちが夢を持ってそれを膨らませる場所が大学だと思うので、それをしぼまないような確固としたものに作り上げられるように、大事にしてほしいですね。単位ももちろん大事ですが、もっとワクワクするような企画とか生き方とかの授業があれば良いなと思います。来年、佐賀大学には美術館ができますが、美術館というのは社会的に貢献する役目と作家や学生たちの気持ちを鼓舞する2つの面があると思います。それをうまくリンクさせるやり方を考えてもらいたい。建物を造る事よりそれをどう運営し活用するかが大切だと思います。佐賀市で開かれた個展会場にて大学時代の塚本さん活躍する佐大OB4