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研究紹介家族の絆、調和、子どもの利益~これからの親権法のあり方~くりばやしかよ栗林佳代経済学部法政策講座准教授子どもがいる夫婦が離婚すると、離婚後に子どもはどちらかの親に引き取られることになります。そして、子どもを引き取らなかった親には、面会交流(面接交渉権)が認められます。この面会交流は、1964年頃から裁判所や実務家、学者の間で認められるようになり、昨年、2011年の法改正(施行は2012年4月)により民法という法律に明文化されました。私が比較研究の対象としているフランス法では、面会交流に相当する訪問権が19世紀中頃から認められるようになり、1970年には法律に明文化されております。私は、この先駆的なフランス法の訪問権を参照して、面会交流という権利を中心に研究を行ってきました。そして、私は、『子の利益のための面会交流―フランス訪問権論の視点から』という本を出版し、今年5月に尾中郁夫・家族法新人奨励賞を受賞しました。私が研究している領域は、民法のなかでも特に、講学上、家族法とよばれる領域に属しますが、この家族法を取り巻く社会的状況は近年とりわけ著しく変化しています。たとえば、前述の法改正の際には、虐待にあった子どもに対する親権停止の制度が導入され、この4月から運用されております。また、国内だけでなく、国際的な局面では、ハーグ条約に関することがあります。今年3月に政府はハーグ条約の批准に関する法案を衆議院に提出しました。法案自体は、この11月の衆議院の解散により廃案となりましたが、ハーグ条約は、近い将来、批准されることでしょう。ハーグ条約が日本で発効すれば、国際結婚が破綻して日本人の親が子どもを一方的に日本に連れ帰っても、これまでとは異なり、子どもは強制的に元の国に送り返されることになります。とりわけ、ハーグ条約のゼミの風景批准の前提として国内の家族法を整備する必要があり、近年、家族法の改正が盛んに議論されております。私は、これからの社会の担い手である学生に、ゼミや講義でこうした家族的な問題を認識および検討してもらうと同時に、近年の状況をふまえ、法理論の発展と社会に貢献すべく新しい親権法のあり方を研究していきたいと考えております。今後の研究において、家族の絆を法的に保つ権利ともいえる面会交流をさらに充実させ、そして、面会交流を包含する親権について、子どもの利益を尊重しつつも、家族間の調和に配慮して、検討したいと思っております。尾中賞贈呈式の様子ゼミ論報告会尾中賞を受賞した『子の利益のための面会交流~フランス訪問権論の視点から』(法律文化社)6