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農学部生物環境科学科准教授きたがきひろし北垣浩志発酵・醸造学というと、古典的な学問と思う人が多く、最先端、技術革新というイメージを持つ人は少ないかもしれません。確かに発酵・醸造学は古くから研究されてきた学問です。実際に現在、発酵・醸造学の研究者、特に伝統発酵食品の研究者は非常に少なくなってしまっています。しかし、日本の発酵・醸造業は日本の基幹産業であり、発酵技術は世界的に見ても日本の独自技術です。私は発酵技術に興味があり、大学院を卒業した後、5年間国税局鑑定官として醸造蔵の屋根裏部屋で杜氏さんと寝泊まりして約1000蔵の清酒醸造指導を行いました。その後独立行政法人酒類総合研究所で杜氏として工場スケールの清酒を製造し、発酵・醸造業の製造現場で足りない技術・研究を把握しました。そこで、米国サウスカロライナ医科大学に留学して得たミトコンドリア学や脂質化学の視点を取り入れて発酵技術におけるイノベーションに挑むことにしました。まず、ミトコンドリアに着目するという発酵学にはこれまでになかった発想で、酒類業界で長年の懸案となってきたピルビン酸を残存する清酒酵母の育種に成功しました。この清酒酵母は実際の清酒醸造業における低アルコール清酒の製造で使われ、その商品は既に市販されるに至っています。また、有効利用策が求められていた焼酎粕から機能性脂質であるセラミドを見出して構造決定し、日本古来の麹菌がこれを生産することも明らかにしました。この研究成果を元に多くの企業が商品化に取り組んでいます。これらの技術開発は科学技術分野の文部科学大臣表彰(若手科学者賞)や日本農学進歩賞、日本醸造協会技術賞などを受賞し、米国化学会誌やAnnualReview誌に掲載されました。研究室の学生たちも日本を代表する発酵・醸造会社に多く送り出すことができました。古典が再び最先端となるルネッサンスの瞬間に、一緒に基幹産業の発展に貢献したい学生さんをお待ちしております。発酵・醸造学ルネッサンス?最先端研究で醸造業界の現場を革新する?日本酒の発酵試験の様子研究室での実験の様子醸造蔵の前でゼミ生とともに醸造蔵の前でゼミ生とともに研究紹介5