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研究紹介新規の抗菌性生体材料の開発?社会のための科学をめざして?医学部附属病院は過去10年間、人工股関節の年間手術数で国内第1位、人工膝関節でも10位以内に入る実績をあげてきました。レベルの高い手術と良好な手術後の成績が全国に知れ渡り、全国の患者が佐賀大学での手術を希望した結果が、人工関節置換術数で国内第1位の実績となっています。人工関節手術は感染が大きな問題です。つまり人工関節という「異物」が体内に入りますので化膿しやすく、また一旦化膿するとなかなか治りにくくなります。そこで人工関節手術は病原菌の少ないきれいな手術室(クリーンルーム)で行う必要があります。クリーンルー図1銀ハイドロキシアパタイト(HA)溶射被膜の骨伝導(HA形成)能24時間のSBF(疑似体液)浸漬により、表面に結晶層が析出しているのがSEM(走査型電子顕微鏡)観察(左図)により確認された。この結晶層はX線回折法による結晶構造解析(右図)によりHAと同定された。ムというのは普通の手術室より約100倍きれいな部屋だと考えてよいと思いますが、そのような場所で手術を行っても残念ながら手術後の感染症の発生を完全に抑えることはできません。その感染部位が骨内に及ぶため治療に難渋することが多く、患者様にとって大きな苦痛であるのみならず、医療従事者への多大な負担となり、さらに病院経営や医療保険財政へも甚大な悪影響をもたらします。私たちの研究室では手術後感染症発生の防止に寄与することを目的とした抗菌生体材料の研究・開発を医学部整形外科学および京セラメディカル(株)と共同でみやもとひろし宮本比呂志医学部病因病態科学講座微生物学分野教授行ってきました。具体的には図1と図2でご覧いただけるように、高い抗菌性を有する銀を、高い骨伝導能を有する生体材料であるハイドロキシアパタイトに含有させることで、抗菌性と骨親和性を両立した銀含有ハイドロキシアパタイト溶射被膜法(Ag-HA)を開発し、段階的に臨床応用に向けた基礎研究を進めてきました。同時にこれらの研究成果を積極的に発表してきました。抗菌研究グループ全体で、国際学会19回、全国規模の国内学会62回、査読のある英文原著11編、特許申請国内1 0件、国際(PCT) 4件にのぼります。最後のステップの銀の生体内毒性に関する研究成果については現在まとめているところで、まもなく臨床研究が開始される予定です。佐賀の大学としてScience forSociety(社会のための科学)を常に心がけ、科学(技術)の社会(患者)への還元を進めていきたいと考えています。図2ACBD銀ハイドロキシアパタイト(HA)溶射被膜の細菌付着阻害A:銀HA溶射被膜B: HA溶射被膜C:黄色ブドウ球菌感染後の銀HA溶射被膜D:黄色ブドウ球感染後のHA溶射被膜コントロールのHA溶射被膜には抗菌性はなく24時間後には大部分の表面(88%)が細菌によって覆われたが、銀HA溶射被膜では表面の9%が覆われるに留まる。研究風景6