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トピックス第5 2回日本クラフト展で経済産業大臣賞・日本クラフト大賞受賞!いがわたけし井川健文化教育学部美術・工芸講座准教授「落陽」W132×H5.5×D42(cm)、2009年タモ、拭き漆撮影/倉橋正・庄司直人日本クラフト展は、JCDA日本クラフトデザイン協会が主催する公募展です。“クラフト”の特徴は、鑑賞のみの美術作品ではなく“生活の中で使うこと”を前提とした作品であることです。一方、公募展への出品作という観点からは、既存のものとは違う何かの新鮮さは欠かせない要素です。今回の受賞作「落陽」は横幅132cmと大きな作品です。用途の成立と新鮮さの兼ね合いが難しいところです。「落陽」に使った材は、厚さは2cm程度の反ってしまった板です。反りのある板を楕円に切り取ると、その切り口は緩やかな3次曲線をかんな自然と描きました。その後、鉋を使って内側をくぼめ、わずかな曲面の変化をつけています。赤く染めた拭き漆と縁が描く曲線が水平線に沈む夕日を思わせることから「落「夜へ」W114×H17×D61(cm)2007年漆、硬質発泡ウレタン撮影/武田照行陽」と題しました。私は文化教育学部美術・工芸課程で木工芸の授業を主に担当していますが、本来の専門とするところは漆工芸です。木と漆は古くから近い関係にあり、その両方を扱えることは作品を作る上での利点となります。漆工芸の中でも私の専門とするところは、「夜へ」のように、黒や朱などの1色の塗りのみで表現を試みる作品です。“塗り”の表現では素地(形作りに用いた素材)は塗り込めてしまい、その材質感は厚い塗面の下に隠れます。むしろ、それを隠すことで素地の存在を感じさせないようにし、漆塗膜の材質感を際立たせようとする表現方法だと言えます。一方の「落陽」は“拭き漆”と言われる木を見せる仕上げ方法です。この手法では、木地に塗った漆は拭き取ります。拭き取りながらも、極薄く漆が残りますので、これを何回も繰り返すことにより、徐々に艶が増していきます。私の作品では木が主役となるのは珍しいことなのですが、“塗り”の感覚をもって木を主役としたことが作品に新鮮さをもたらしたのかもしれません。日本クラフト展のような公募展への出品とは別に、“個展”という形で作品発表する場合があります。先日は、茨城県の下館市にあるギャラリーから声がかかり、個展を開催してきました。下館は行ったことのない土地でしたので個展の依頼があったことは意外でしたが、これも何かの出会いだと思い、お世話になることにしました。オーナーさんのご自宅の一室を展示空間とした、生活空間の中で作品を見せるというコンセプトで運営されているギャラリーでした。平成25年10月には佐賀大学美術館が開館します。その開館を記念する企画展では私も作品を展示する機会があります。その際には、実際の作品で“漆”の魅力を感じていただけたらと思います。7