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研究紹介宇宙の始まりを探る国際リニアコライダー(I L C)実験への期待「物は何からできているのか?」「物質の最小単位は?」という問いかけは、ギリシア時代から現代まで脈々と続けられる人類にとっての普遍的な疑問といえます。20世紀初めに、JJトムソンによる電子の発見、ラザフォードによる原子核の発見により原子の構造が解明され人類の謎は新たな局面を迎えました。量子力学、相対論が確立され、加速器というミクロの世界の探査装置を人類が手にしてからその研究のスピードはさらに加速され、現在は10の-18乗m(100京分の1メートル)の世界が相手になっています。今年LHCによるヒッグス粒子の発見がノーベル賞をもたらし、究極の物質であるクォーク、レプトンと、それらの間に働く三つの力(電磁、弱い、強い)をまとめあげた『標準模型』を構成する粒子が全て実験的に確認されたことになります。発見されたばかりのヒッグス粒子には、多くの謎が含まれています。ヒッグスは、他の粒子に質量を与えるために導入されましたが、そのメカニズムが検証されていません。我々の周りは至る所、ましてや「真空」さえもヒッグスで埋め尽くされていることになります。これは19世紀前までその存在が信じられていた「エーテル」と似た状況かも知れません。国際リニアコライダー(ILC)実験は、これらの謎を解明し、さらなる疑問に対する解決の糸口を提供することが期待されています。何故クォークやレプトンは存在するのか、力の源は一つなのか(大統一理論)、超対称性は存在するのか、粒子はひもなのか、我々の住む時空間は何故4次元なのか、宇宙の始まりはどうだったのか。私たちの謎は尽きません。ILCは直線30kmに配置される巨大な加速器で電子(陽電子)を衝突させ高エネルギーの光を創り、ヒッグスや未知の粒子の研究をするための実験施設です(脊振山地は日本の候補地の一つになっていましたが、残念ながら東北の北上山地がより良い立地であると評価されました)。ILCが、日本に建設され、科学技術立国として基礎科学の世界の中心になれることを願っています。※LHC…Large Hadron Collider(大型ハドロン加速器)の略。CERN(ヨーロッパ合同原子核研究機構)がスイスとフランスの国境付近に建設中の素粒子加速器。ILC概念図/全長31kmのトンネルに加速器が設置される。中央で電子陽電子が衝突し、その反応を調べる。飛跡検出器モジュールILC実験の検出器(模型)すぎやまあきら杉山晃工学系研究科物理科学講座教授5