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概要:
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私の専門分野は、村落社会学、環境社会学と呼ばれる分野であり、社会学(ときには民俗学)の視点から、自然資源の利用管理や自然と人間の関わりに関する諸問題を研究しています。例えば、最近さまざまなメディアや政策のなかで使われるようになった「コモンズ」(みんなのものとしての自然や資源の利用管理の仕組みについての議論)という考え方は、これらの分野でとりあげられてきた研究の一つです。社会学といえば、理論研究や統計資料の分析、マスメディアの分析などを主な研究手段とする人もいますが、私の場合は、コースのほかの先生方と同様、実際の現場(農村や山村など)に出かけて行って、そこで生活をしている人たちにとって何が問題であるか、何が生じているか、対処するための(これまでしてきた)社会的な仕組みはどのようなものか、集落や集団・組織、農業生産と生活、そして地域文化などの歴史や現在について、様々なデータをとると同時に、時間をかけて聞き取りをすることが調査の中心になります。二次的なデータの分析やアンケートだけではわからないような生活の現場からの声をなんとかつかみとりたいと考えています。佐賀大学に赴任してからこれまでに、阿蘇の草原保全に関する社会システムや地元と政策の間のすれ違いの原因、九州山地の山村の社会組織、獣害への対処などについて研究してきました。その中の一つである獣害の研究を紹介すると、同じ九州の農山村であっても、県によってイノシシの獣害に対する地元の対応は大きく異なっています。例えば福岡・長崎・佐賀などの北部九州の山村では、増加し続けるイノシシの被害に対して、電気牧柵やワイヤーメッシュを張り巡らせたり、行政の側でも一斉駆除(実際には追い払い)や講習会などを開催したりしていますが、依然として被害は深刻です。一方、宮崎や鹿児島の山村では、イノシシはいるのですが、地元の人に話をきくと、北部九州ほどにイノシシに関する拒否感はなく被害総額も相対的には高くありません。その要因として考えられることは、生産している農作物や地理的条件や気候、生態系などもありますが、歴史を振り返ってみると、北部九州では1970年代までの数十年間、イノシシが絶滅していた歴史があり、その間に狩猟やイノシシ食の伝統も消えてしまったと考えられます。また、人間が山で作業する日数なども大きく異なります。このような、人間とイノシシの関係の違いが、被害の大きさや被害意識、地元の対策の違いにもあらわれてきます。とするなら、イノシシの防除政策も、地域の実情をふまえたものでなければなりません。現在取り組んでいるテーマは、1林業不振や過疎高齢化の中で問題となってきた日本の山や森の管理について、2急激に変化しつつある東南アジアの農村の土地利用の変遷と社会システムとの関係についてなどです。宮崎県の調査地域農学部地域社会開発学講座准教授ふじむらみほ藤村美穂ラオスの調査風景自然資源の利用管理を生活組織から考える研究紹介6