有明海奥部の貧酸素化、長期的な進行の原因を解明しました

 

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有明海奥部の貧酸素化,長期的な進行の原因を解明

 

◆ 概要

 有明海奥部の貧酸素化が長期的に進行したメカニズムについて,佐賀大学・九州大学の研究グループが,国際科学誌Journal of Oceanography電子版に2本の論文として発表した。研究を行ったのは,佐賀大学低平地沿岸海域研究センターの速水祐一准教授・藤井直紀助教,九州大学総合理工学研究院の山口創一助教で,佐賀大学が中心となって有明海沿岸4県の大学が共同で実施している有明海地域共同観測プロジェクト(COMPAS)の一環として実施された。

 

◆ 背景

 夏季に起こる有明海奥部の貧酸素化は,二枚貝など海洋生物の斃死を引き起こし,水産資源減少の大きな原因となっている。しかし,沿岸に大都市がなく,陸域からの負荷量が増加していない有明海で長期的に貧酸素化が進行したメカニズムはこれまで不明であった。

 

◆ 本研究の成果

 今回の研究では,有明海奥部の貧酸素化は2つのステップで進行したことがわかった。

 1つは1970年代から90年代前半にかけて起きた有機物量の増加で,これは海域内部での有機物生産の増加(あるいは二枚貝などによる有機物分解量の減少)によって生じていた。有機物量が増加すると酸素消費量が増加し,それが貧酸素化の進行を引き起こす。

 2つめは1990年代後半の諌早湾潮受け堤防建設による諫早湾口~島原半島沿岸の潮流減少である。これまでの研究で,諫早締切にともなった有明海奥部の潮流の変化はほとんどないことが明らかになっており,締切と有明海奥部の貧酸素化の因果関係は不明であった。

 今回の研究では,諫早湾口~島原半島沿岸の潮流減少によって外海起源の低温・高塩分の海水が底層で有明海奥部に浸入しやすくなり,その結果,有明海奥部の海水が上下に混合されにくくなることで貧酸素化が進行したことが示された。これらの変化には,有明海で起きている潮汐・潮流の長期的な減少も影響しているものと考えられた。

 

◆ 今後の期待

 貧酸素化進行のメカニズムが解明されたことで,今後の実効性ある環境再生方策立案の進展が期待される。

 

        

 

 

【本件に関するお問い合わせ先】

   速水祐一(低平地沿岸海域研究センター准教授) 

   電話 0952-28-8499

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