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環境研究と地域社会への取組み
佐賀大学の環境研究・地域社会への取組みを紹介します。

工学系研究科・理工学部の地域社会への取組み

「ストップ!! 地球温暖化」~レーザ光で空を測る~

     大学院工学系研究科(海洋エネルギー研究センター兼任) 教授  奥村 浩
 佐賀大学では毎年、エコアクション21 関連の環境教育、日常のゴミの分別の徹底、夏季と冬季の巡回による省エネルギー点検などを通じて、学生や教職員に対して、広い視野からの環境への共通意識の徹底が図られています。こうした取組みの多くは、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス発生の抑制に、少なからず効果があろうかと思います。
 環境省、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立環境研究所は、2009(平成21)年1月23 日に、地球全球に渡る温室効果ガス分布状態の定期的モニタリングを目的とした、温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT(日本名:いぶき)」を打ち上げました。
 GOSAT 衛星には、メタンや二酸化炭素の濃度を計測するフーリエ変換分光計(FTS)や、精確な温室効果ガス計測を妨げる要因である大気中の浮遊粒子や雲を観測するCAI センサが搭載されており、太陽同期準回帰軌道を約98 分で1周し、地球上の同じ場所の上空を3日に1回のペースで通過していきます。CAI センサからの画像は、地上局で受信後、USTREAM を通じてインターネット配信されています。
 本学大学院工学系研究科の奥村・新井研究室では、このGOSAT プロジェクトに2011 年3月より参画しており、地上設置型FTS(JAXAより運用委託)と、2基のレーザレーダ(環境研究所、気象研究所より運用委託)を用いて、GOSAT 衛星の佐賀市上空通過に合わせた同期観測およびデータ解析を担当しています。
 地上設置型FTS は、基準光源(レーザ光)と太陽光を使って、大気中のメタンおよび二酸化炭素などの濃度を観測することができます。一方、レーザレーダは、強力なレーザ光を上空に打ち上げ、その反射光から各高度での大気の情報を得ることができます。佐賀大学では、目に見えない3種類の紫外光を用いて、地上~対流圏の重要な温室効果ガスのひとつであるオゾン(O3)の濃度分布を観測するとともに、緑色の可視光(波長532 nm)と、目に見えない近赤外光 (波長1,064nm)の2種類のレーザ光を用いて、地上から成層圏下部(およそ25,000 ~ 30,000 m)までの大気浮遊微粒子(雲、霧、黄砂、火山灰、PM2.5 など)の観測行い、濃度、粒子形状、粒径分布の解析を行っています。
 GOSAT 衛星は、予定されていた運用を過ぎていますが、がんばって地球の周りを回っています。数年後には、後継機GOSAT-2 衛星の打ち上げも予定されていますので、私たちの研究室も、まだまだ大気観測の手を緩めるわけにはまいりません。
 快晴の夜、佐賀大学の本庄キャンパスの方向から上空に向かって美しい一筋の緑色の光が見えたら、それは観測中のレーザレーダから放たれたレーザ光で、残念ながら流れ星でも、「天からの希望の光」でもありませんが、何かいいことがあるかもしれませんね。

図1:二酸化炭素の20138月のカラム平均濃度の2.5度メッシュ平均値分布

(提供:国立環境研究所提供)

    図2:レーザレーダが観測した濃いPM2.5のクラスタ()


農学部の地域社会への取組み

食品廃棄物の循環型農業への利用と化学合成農薬使用量の削減に関する研究

農学部附属アグリ創生教育研究センター オーガニックファーミング学分野 
                                       松本 雄一(講師) 
佐賀県はハウスミカン生産量全国1位など主要な柑橘生産県の1つであり、ミカンジュースなどの加工も盛んに行われている。一方で加工残渣については有効利用が難しく、廃棄物としての処理量も多い。これらの廃棄物を循環型農業で有効利用を図り、廃棄物の削減とともに、循環型農業の推進を図ることを目指し、土壌病害やセンチュウ防除法としての実施される還元型太陽熱土壌処理に必要な有機物としての代替利用を検討した。ミカン果皮を中心とするミカンジュース残渣を土壌病害であるトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici)汚染土壌にすきこみ、還元型太陽熱土壌処理を行った。その結果、処理後の土壌からは本病原微生物の検出は見られず、従来の土壌消毒法と同等の防除効果が示唆された。この結果は、ミカンジュース残渣を循環型農業に有効利用できるだけでなく、農薬を使用しない新たな土壌消毒法として、環境保全型農業の推進に貢献が期待される。
 今後は、ミカンジュース残渣を散布した圃場における農業生産面への影響を検討すること、コストや労力といった実用面について検討を行うことで、農業現場に普及しうる技術として確立していく。