108年ぶり!本学発の日本酒酵母が全国配布へ!
108年ぶり!佐賀大学発の日本酒酵母(佐賀大学北垣浩志特許)が全国配布へ!
大学開発の酵母が全国頒布されるのは東京帝国大学 高橋偵造教授以来108年ぶり2例目!
1 この度、佐賀大学農学部生物環境科学科の北垣浩志准教授が独自に開発した「日本酒酵母
ピルビン酸低生産性酵母7号」(佐賀大学北垣浩志特許第5413847号)がその有用性を認められ、
日本醸造協会を通じて全国で頒布されることになりました。
2 日本で日本酒酵母の頒布が始まったのは1906年に日本醸造協会が設立されてからであり、
それ以来、全国の多くの大学や公的研究機関がその研究の一環として日本酒や日本酒酵母を開発
してきました。公的研究機関が開発し全国頒布に至った例としては国税庁醸造試験所の大内弘造
博士・秋山裕一博士が育種した泡なし酵母、国税庁醸造試験所の北本勝彦博士が育種した尿素非
生産性酵母、仙台国税局鑑定官室長の小川知可良氏や宮城県酒造組合醸造試験所の佐藤和夫氏が
自然界から分離した優良酵母がありこれまで27株の清酒酵母が全国に頒布されてきましたが、
大学が育種した酵母が全国頒布に至ったのは東京帝国大学高橋貞造教授が協会第一号酵母を1906
年に開発して以来2例目となりました。
3 近年、日本酒の海外での販売が好調ですが、日本酒はアルコール度数が他の酒類と比べて高い
ため、海外の消費者の健康志向に訴えるためにはアルコール度数の低い日本酒の製造技術が必要と
されてきました。しかしこうした低アルコールの日本酒やスパークリング清酒の製造時には日本酒
とマッチしないにおいの原因となるピルビン酸やジアセチル、α―アセト乳酸が生じることが問題
になっていました。本開発酵母は、こうした物質の濃度が通常の酵母よりも低くなっているため、
こうしたジャンルの日本酒を造るうえでの初めての選択肢となったことが評価されました。今後、
この酵母は健康志向で高品質な低アルコール清酒、スパークリング清酒を製造するのに貢献する
ことが期待されます。
4 本酵母は発酵・醸造学の分野でこれまで研究の対象になっていなかった、ミトコンドリアを
活用するという独創的な発想で開発されており、本酵母に関連した研究はその独創性、科学レベル
の高さから科学技術分野の文部科学大臣表彰(若手科学者賞)、先端技術大賞・特別賞などを受賞
し、米国生化学分子生物学会誌JBC (Journal of Biological Chemistry)や米国微生物学会誌
AEM (Applied and Environmental Microbiology)(微生物学/生物工学/応用微生物学分野での被
引用数世界1位)、Annual Review of Food Science and Technology (Impact factor 6.0)などに
第一・責任著者論文として掲載され、基礎研究として世界的な水準を保ちながらも波及効果の高い
産業の育成と両立させている点が、全国的にも極めて高く評価されています。
○本研究に関わる代表的な論文・特許(すべて第一・責任著者)(責任著者は*)
1 Shodai Shiroma, Lahiru Niroshan Jayakody, Kenta Horie, Koji Okamoto and
Hiroshi Kitagaki*
Applied and Environmental Microbiology, 80 (3), 1002-1012 (2014)
2 Hiroshi Kitagaki* and Katsuhiko Kitamoto
Annual Review of Food Science and Technology, 4, 215-235 (2013)
3 Hiroshi Kitagaki et al., Journal of Biological Chemistry, 284, 10818-30 (2009)
4 北垣浩志、ピルビン酸低生産酵母の育種方法、特許第5413847号
○本研究に関わる受賞(1-6は代表としての受賞)
- 科学技術分野の文部科学大臣表彰(若手科学者賞)(2010年)
- フジサンケイビジネスアイ 独創性を拓く 先端技術大賞・特別賞(2013年)
- 農学会・日本農学進歩賞(2008年)
- 日本生物工学会・生物工学奨励賞(江田賞)(2008年)
- 佐賀新聞文化奨励賞(学術部門)(2014年)
- 九州地方発明表彰・発明奨励賞(2014年)
- 日本農芸化学会トピックス賞(2014年)(指導する修士課程の学生の受賞)
【本件に関するお問い合わせ先】
佐賀大学農学部
准教授 北垣 浩志
TEL 0952-28-8766