COP30で海洋温度差発電と「久米島モデル」について紹介

【概要】

2025年11月14日、佐賀大学海洋エネルギー研究所 池上康之所長は、ブラジル政府からの招待により、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第30回締約国会議(COP30)において、海洋温度差発電技術と発電後の海洋深層水利用技術に関する研究成果について講演を行いました。

開催期間:2025年11月10日~11月21日
開催場所:ブラジル ベレン 

ブラジル科学技術イノベーション省(MCTI)の主要研究機関であるパラエンセ・エミリオ・ゴエルディ博物館(Museu Paraense Emílio Goeldi)内の専用スペース 「Casa da Ciência(科学パビリオン)」にて、気候変動とその影響に関する多様な分野の専門家との学際的な会議「エネルギー転換:海洋再生可能エネルギー」が開催。

この会議のセッションの中で、本学の海洋温度差発電と関連技術の研究成果として、SATREPS事業、「久米島モデル」、ブラジルにおける海洋再生可能エネルギーの可能性、本学の「知の世界展開」等を 『From Island to Global: OTEC Pioneering the New Phase of Climate Action.― Toward the New Phase of Implementation at COP30— From Island Regions to the World―(島から世界へ:OTECが気候変動対策を新たな段階へ導く―COP30における新たな実施段階へ向けて— 島嶼地域から世界へ)―』 と題して紹介。

会議では、先ず、アンドレア・ラッチェ教授 – ブラジル科学技術イノベーション省戦略政策プログラム担当次官(Prof. Andrea Latge’ – Secretary for Strategic Policies and Programs of the Brazilian Ministry of Science, Technology and Innovation.)が、主催者を代表して挨拶された。その後、セゲン・エステフェン教授、ブラジル国立海洋研究機構総裁(Prof. Segen Estefen、,General Diretor, National (Brazilian) Institute for Ocean Research)が、モデレータを担われるなか、池上所長の講演が行われました。

本講演では、COP30で提案され『「ブルーパッケージ」として、海洋への年間1160億ドルの投資を推奨(COP30 ‘blue package’ recommends investing US$ 116 billion per year in oceans)』      や、アマゾン研究における先駆者であるブラジルの科学者   カルロス・ノブレノーベル博士(Dr. Carlos Nobre)が提案した『海から生まれるエネルギーがフェルナンド・デ・ノローニャを救う(Energy that comes from the ocean can save Fernando de Noronha)』などについても議論がされました。特に、カルロス・ノブレノーベル博士は、「OTECプラントは、クリーンで再生可能かつ継続的な電力(24時間365日)を生産するため、エネルギー転換に向けた有望な代替手段で、フェルナンド・デ・ノローニャ島では、ディーゼル発電の段階的代替と脱炭素化を推進している。さらに、島でのOTEC導入実績は、サルバドールからナタールにかけてのブラジル沿岸地域を中心に、海洋熱発電プラントの他地域への拡大に活用できる。」と提案しています。

<用語解説>

*1 SATREPS事業

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)は地球規模課題を対象とした国際共同研究を推進する日本政府のプログラムです。このプログラムは、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)の2つの日本政府機関の協力によって実施されているもので、本学は『マレーシアにおける革新的な海洋温度差発電(OTEC)の開発による低炭素社会のための持続可能なエネルギーシステムの構築』に関し、国内の研究機関とマレーシアの複数の大学にて共同研究を実施したものです。

*2 久米島モデル

海洋温度差発電と発電後の海洋深層水を魚介類の養殖や化粧品利用等に産業利用するもので、発電と産業利用をセットにした久米島での地域振興に関する取組みを指すものです

*3 「ブルー・パッケージ」

海洋保護、エネルギー転換、海洋資源の持続可能な利用を目的としている。もう一つの焦点は、マングローブ再生やサンゴ礁保護など海洋ベースの解決策を拡大できる資金調達メカニズムの拡充にある。•文書は提案を列挙し、2030年までの目標を提示している。 30以上の国際的イニシアチブがこのパッケージ策定に参加した。ブラジル環境・気候変動省が調整に参画した。

*4 フェルナンド・デ・ノローニャ

フェルナンド・デ・ノローニャ(Fernando de Noronha)は、ブラジルのペルナンブーコ州に属する大西洋上の島々、及びその主島の名前である。2001年に「ブラジルの大西洋上の島々 : フェルナンド・デ・ノローニャ諸島とロカス環礁の保護区群」として世界遺産リストに登録された。2018年にはラムサール条約登録地となった。

<公開された動画>

Casa da Ciência COP30 – 14/11 Programação Tarde
https://www.youtube.com/watch?v=xHsZpVhqRHM

COP30集合写真

COP30講演中の池上所長

COP30ステージ上の池上所長

提供:ブラジル科学技術イノベーション省(MCTI)

 

【本件に関する問い合わせ先】

佐賀大学海洋エネルギー研究所 伊万里サテライト 堀
Tel:0955-20-2190 Fax:095-20-2191
E-mailアドレス:press@ioes.saga-u.ac.jp
https://www.ioes.saga-u.ac.jp/

 

 

 

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