佐賀大学病院肝疾患センター、パラオ政府主催会議で「Healthy Liver!!」プロジェクトの成果を発表

【概要】
 佐賀大学病院肝疾患センターは、2025年9月30日にパラオ共和国で開催された「第32回 Mechesil Belau Conference」(パラオ政府主催)に正式招待を受け、同センター特任助教で管理栄養士の原なぎさが「Healthy Liver!! 」プロジェクトについて発表を行いました。本プロジェクトは2023年度に開始され、佐賀大学病院肝疾患センターがパラオ政府、医療機関、現地飲食店と連携して、肥満・脂肪肝・糖尿病などの生活習慣病の予防・改善を目指す取り組みです。2025年度は、これまでの調査結果を踏まえ、健康的な食事や運動の実践法を紹介するとともに、現地レストランと共同開発した「パラオ版シシリアンライス」の再提供を開始しました。

〇活動の目的
 パラオ共和国では肥満率が高く、生活習慣病の増加が大きな課題となっています。佐賀大学病院肝疾患センターは2023年度から現地と連携し、初年度に肥満および脂肪肝の実態調査を、2年目には健康的な食事介入としてパラオ版シシリアンライスの提供を実施してきました。

 3年目となる今回は、「Healthy You, Healthy Me, Healthy Us, Healthy Palau」をテーマに掲げた同会議において、「Healthy Liver!! Know your Liver! Healthy Eating & Exercise! Sicilian Rice from Saga, Japan to Palau」という演題で登壇。これまでの調査結果を紹介しながら、自身の肝臓の状態を正しく“Know your Liver(知る)”ことの重要性と、食と運動の両面から健康を維持する必要性を訴えました。また、脂肪肝や生活習慣病を放置すると、将来的に肝硬変や肝がんなどの重篤な疾患につながる可能性があることを説明し、「今この段階で予防・改善に取り組むことが何より重要」と呼びかけました。これにより、パラオにおける生活習慣病対策の新たな方向性を示しました。

【成果と取り組み内容】
 2023年および2024年の調査では、FibroScan®(肝臓の硬さや脂肪量を測定する装置)および InBody®(体組成分析装置)を用いて健康チェックを実施しました。その結果、パラオ成人183名のうち42%が肥満(BMI≧30)、62%に肝脂肪を認め、20%に進行した肝線維化の疑いが見られました。さらに、肥満女性47名を対象にした食行動調査では、夜食習慣や油脂の多い料理を好む傾向が確認されました。

 この結果を受け、「A healthy meal starts with balance(健康的な食事はバランスから)」をキーワードに、現地食材を活かした主食・主菜・副菜の組み合わせを意識した食事法を提案しました。加えて、現地レストラン「Tori Tori」(コロール州)と共同開発した「パラオ版シシリアンライス」を提供し、バランスの良い食事の実践を体験してもらいました。提供後のアンケート(n=114)では9割が満足と回答し、嗜好性と健康性を両立した地域密着型の健康メニューとして高く評価されました。また、発表では佐賀大学と久留米大学が共同開発した脂肪肝のための運動プログラム「Hepatocise(ヘパトサイズ)」を紹介し、会場の参加者とともに動作を実践、簡単で安全に取り組める筋力トレーニングとして好評を博しました。これらの取り組みにより、「食」と「運動」の両側面から健康を支える包括的アプローチを示すことができ、参加者の理解と関心を深める貴重な機会となりました。

〇今後の展望
 今回の発表は、パラオ政府の女性リーダー組織 “Mechesil Belau” の代表である BILUNG Gloria G. Salii 氏 および EBILREKLAI Mitsko Walter 氏 の招待により実現しました。現地での調整にあたっては、Bilung 氏のご息女 Uroi Salii 氏 にご尽力をいただきました。登壇後には、各州の女性リーダーから高い関心と共感が寄せられ、活動の継続を望む声や、健康づくり・食生活改善への具体的なニーズが明確となりました。我々の活動開始から3年目を迎え、公的機関、医療・教育機関、NGO、民間団体との連携の輪が着実に広がりつつあります。今後は、パラオ国内の他のレストランなどとの協働を通じて、「誰もが気軽に健康的な食事を選べる環境づくり」を推進し、地域住民自身が主体となって健康づくりを担う体制の確立が期待されます。

 なお、本発表は在パラオ日本国大使館をはじめ、 Palau Community College の 森崎暢子 氏、Peace Winds Japan の 安間叙通 氏、Tori Tori Restaurant の 中尾郁弥 氏をはじめ、現地関係機関の多大な支援と協力のもとで行われました。関係者の皆さまに深く感謝いたします。

【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター  0952―34-3010


① 第32回 Mechesil Belau Conference「Health (Mental, Spiritual, and Physical Health)」セッションにて:政府関係者、海軍医療チーム、Peace Winds Japan らと共に健康づくりの取り組みを共有。


② Healthy Liver!!プロジェクト発表の様子:Palau Community College教員のYoko Morisaki氏と登壇、肝疾患センターのマスコットキャラクター「肝(かん)ちゃん」も紹介。


③ 脂肪肝のための運動プログラムHepatociseより“タオル引き”の実践:タオルがないためイマジネーションタオルで。皆さん余裕の表情。


④  Hepatociseより“ひざタッチ”の実践:会場からは「Ooooh!」と声が上がりつつも、体幹の筋トレを楽しく紹介。


⑤  パラオ版シシリアンライス:カンクンやパパイヤなどの地元野菜をふんだんに使用。Tori Tori Restaurantシェフ Fumiya Nakao 氏と。


⑥  Tori Tori Restaurant店頭のタペストリー:レストランスタッフによるメニュー紹介。


⑦  在パラオ日本大使館にて:折笠弘維大使および小野俊輔次席(臨時代理大使)と。

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