農学研究科の学生が令和7年度日本水産学会九州支部大会で学生優秀賞を受賞

【受賞者】
佐賀大学大学院農学研究科 鈴木伸太郎
【受賞した賞の名称】
令和7年度 日本水産学会九州支部大会 学生優秀発表賞
【受賞先】
公益社団法人 日本水産学会九州支部
【受賞した日】
2025年12月7日
【受賞した研究の題目】
「二枚貝の貧酸素継続暴露ストレスを評価する新規手法の開発」
〇 鈴木伸太郎1・川名拓里2, 藤武史行2, 神﨑博幸2, 折田亮3
1: 佐賀大学農学研究科、2: 佐賀県有明水産振興センター、1: 佐賀大学農学部
【受賞につながった研究内容】
本研究の対象生物であるサルボウガイは、かつて有明海の主要な漁獲対象種であったが、近年は資源量が減少し、資源回復のために稚貝を放流する取り組みが行われています。放流後のサルボウガイの生残には、夏場に発生する貧酸素水にどれくらいの期間晒されるかが重要な要素になります。貧酸素水の発生状況を調べるためには、従来、水質計が用いられていますが、水質計は高額な機器であることや、フジツボ等の付着生物を除去するメンテナンスを頻繁に実施しなければならないことから、広い漁場にたくさん設置することは現実的に難しいという課題がありました。本研究では、サルボウガイの最大の特徴と言える「赤い血」に着目し、サルボウガイから採血し、血中の代謝物(バイオマーカー)の変化を調べることで、貧酸素水に長期的かつ継続的に晒された状態の個体を判別する技術開発を行いました。室内実験と実際の漁場における実証実験の結果から、血中バイオマーカーを調べる手法の有効性が示されました。二枚貝から採血して、漁場の良し悪しを評価する手法は国際的に見ても新規性の高い手法と言えます。
【その他PRしたい特記事項】
現在、有明海ではサルボウガイ資源が減少したことで、本種の漁獲量がほとんど無い問題に加えて、サルボウガイによる濾過量が減ってしまったことによるノリ養殖への波及効果も危惧されています(サルボウガイはノリの色落ち被害をもたらす植物プランクトンを濾過摂食するため、サルボウガイが減るとその効果も減ってしまう)。そして、この状況を改善するために、サルボウガイの稚貝が大量に放流されています。本研究によって開発された手法は、放流後のサルボウガイの健康状態を評価することができるため、放流適地を考えることへの貢献が期待されます。また、血中バイオマーカーを調べて、貧酸素ストレスが検知される個体の多い漁場は、そのままだと大量死が生じることが予測されるので、死滅してしまう前に漁獲するといった新たな資源管理方法を考案していくことにも貢献することが期待されます。
なお、本研究は佐賀大学の「地域特化型農水産研究開発による佐賀地域の一次産業の安定化と振興プロジェクト」において実施されました。
【researchmapのリンク先】
https://researchmap.jp/ryo_orita
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学農学部 准教授 折田 亮 E-mai:ss7427@cc.saga-u.ac.jp




