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2017/8/ 2 αグルコシダーゼ阻害薬が糖尿病患者の低血糖を含む血糖変動 および交感神経活性の亢進などを抑制

2017年08月2日


PRESS_RELEASE

αグルコシダーゼ阻害薬が急性冠症候群を発症した糖尿病患者の低血糖を含む血糖変動
および交感神経活性の亢進などを抑制

 

 

 

  1. 要旨

 ① 筋梗塞などの急性冠症候群(ACS)を発症した糖尿病患者さんにおいて,経口糖尿病薬の一つであるα-グルコ

  シダーゼ阻害薬(α-GI)であるミグリトールをACS発症後比較的早期から投与することにより,ミグリトール非投与

  と比較して,低血糖を含む血糖変動のばらつきを抑えると同時に,心拍数の上昇や交感神経活性の亢進などを抑制す

  ることが明らかになりました。

 

 ② 本研究結果は,2017年7月6日に,Cardiovascular Diabetology誌に掲載されました。
  URL: http://cardiab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12933-017-0571-1

 

 

  1. 背景

  糖尿病患者さんは心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患を合併することが多く,さらに,低血糖や血糖値の変動が大きい

 症例では予後が悪いとされています。特に,心筋梗塞や不安定狭心症などACSの急性期には,それらが心血管系に及ぼす

 悪影響が大きいとされています。そのため,そのような症例においては,冠動脈自体に対する治療(ステント治療など)

 に加えて,糖尿病に対する治療も併せて重要となってきます。しかし,血糖変動が予後を悪化させる機序は十分明らかに

 なっておらず,さらにそれらに対する治療法も確立していません。α-GIは小腸での糖質の吸収を遅らせることにより食後

 の高血糖を抑制する薬剤で,単独では低血糖をきたす可能性が極めて低いことから糖尿病治療薬として広く使用されてい

 ます。しかし,ACSの急性期における血糖変動や心拍変動および自律神経系に対するα-GIの治療効果について解析を行い

 ました。

 

 

  1. 研究の概要と結果

  今回の研究は,MACS研究に登録された39例のACSを発症して数日以内の日本人2型糖尿病患者さんを対象に,持続

 血糖測定(CGM)による血糖変動の評価と,ホルター心電図による心拍変動および自律神経機能の評価を2日間連続して

 実施し,α-GIであるミグリトールによる治療効果について検討しました。その結果,ミグリトール非投与群(通常治療群)

 では低血糖の発現頻度の増加を伴う血糖変動の増加に加えて,心拍数の増加,および交感神経活性の亢進などの臨床的に

 好ましくないとされる変化が認められましたが,ミグリトールによる治療介入を行った群では,それらの変化が抑制され

 ていることが明らかになりました。

 

 

  1. 研究の意義

  以上の結果より,糖尿病患者における急性冠症候群の発症後急性期においては,低血糖の発生を含む血糖変動が大きく

 増大しており,さらに心拍数の増加や交感神経活性の亢進が同時に生じていることが明らかとなり,それらに対するミグ

 リトールによる治療介入の有効性が示唆されました。

 

  本研究の研究代表である野出孝一 佐賀大学医学部循環器内科教授は次のように述べています。

  「今回の研究を通じて,急性冠症候群を発症した糖尿病患者さんでは,無自覚も含めた低血糖の発生や血糖値の変動が

 想定していたよりも非常に多いことが明らかになりました。さらに,心拍数の増加や交感神経活性の亢進といった特に

 ACSの急性期に悪影響をもたらす心血管系の変化が同時に生じていることも明らかとなり,そのような患者さんの予後を

 悪化させる一因ではないかと考えられました。α-GIは食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果を有しており,低血糖を

 きたしにくい糖尿病治療薬として広く用いられていますが,血糖に対する効果に加えて,ACS発症後の心血管系に対する

 保護的作用が短期間の観察ではありますが確認されましたので,今後はACSを発症した糖尿病患者さんのより長期的な

 治療効果についても検討していきたいと考えています。」

 

 

 

【参考情報】

 

 ○ MACS研究(Effect of Miglitol on Glucose Metabolism in Acute Coronary Syndrome)

   研究代表者: 野出孝一 佐賀大学医学部循環器内科教授

   日本国内の9施設が参加した多施設共同PROBE(前向き,無作為,オープンラベル,エンドポイントブラインド)

  試験です。ACSを発症して7日未満の2型糖尿病患者さんを対象に,ミグリトール投与群または通常治療群に無作為に

  割り付け,血糖変動の評価を目的としたCGMと,心拍変動および自律神経系の評価を目的としたホルター心電図を

  同時に2日間連続して実施しました。ミグリトール投与群では,検査の2日目にミグリトールの投与を開始し,それら

  の指標に対するミグリトールの急性効果を評価しました。本研究は,佐賀大学と福島医科大学および徳島大学などの

  関連施設を含めた研究チームにより合同で実施されました。

 

 ○ αグルコシダーゼ阻害(α-GI)

   わが国の糖尿病治療薬として広く使用される経口血糖低下薬で,今回研究で使用したミグリトールに加えて計3製

  剤が我が国では用いられています。一般的な内服薬と異なり,食事を摂取する直前に内服する必要があるといった特徴

  があります。作用機序として,炭水化物から分解された二糖類を小腸で吸収可能単糖類へ分解する酵素であるαグルコ

  シダーゼを阻害し,小腸での糖質の吸収速度を遅らせることにより,食後の急激な血糖値の上昇を抑制します。また,

  単独の投与では低血糖を引き起こす可能性は極めて低いとされています。

 

 ○ 持続血糖測定(CGM)

   一定の間隔で連続した皮下間質液におけるグルコース濃度を測定する装置です。そのため,夜間や早朝など見逃され

  やすい時間帯も含めて一日を通した血糖変動や低血糖の有無を評価することができるとされています。

 

 

 ○ ホルター心電図

   通常の心電図検査と異なり,24時間など長時間連続した心電図を記録することができ,主には不整脈の検出のために

  日常診療において広く用いられています。また,本研究で実施したように,心拍数の変動や揺らぎなどの情報を元に,

  自律神経機能の評価も可能とされています。

 

 

 

【本件に関するお問い合わせ先】

 

   佐賀大学医学部循環器内科 博士研究員 田中敦史,教授 野出孝一

    〒849-8501 佐賀市鍋島5-1-1

     T E L :0952-34-2364 F A X :0952-34-2089

 

 

   福島医科大学糖尿病・内分泌代謝内科 教授 島袋充生

    〒960-1295 福島県福島市光が丘1番地

     T E L :024-547-1306 F A X :024-547-1311

 

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