佐賀大開発中の新薬が、難治性リンパ腫にも有効である可能性を発見

【研究者】
代表者:嬉野博志12
共同研究者: 城戸口啓介12、山本雄大1、栁谷稜12、倉橋祐樹23、倉橋佑紀23、三根夢花4、青木茂久4、中嶋一貴5、三好寛明5、大島孝一5、川口淳6、木村晋也12

1 佐賀大学医学部附属病院 血液・呼吸器・腫瘍内科
2 佐賀大学医学部附属病院 創薬科学共同研究講座
3 大原薬品工業株式会社
4 佐賀大学医学部 病因病態科学講座 探索病理学分野
5 久留米大学医学部 病理学講座
6 佐賀大学医学部 地域医療科学教育研究センター

【研究成果の概要】
佐賀大学医学部創薬科学共同研究講座の木村晋也教授らの研究グループは、大原薬品工業(滋賀)との共同研究で、血液悪性腫瘍に効果を示す新規DNAメチル化阻害剤であるOR-2100の開発を進めています。悪性リンパ腫は血液がんの中で最も多く、MYCBCL2 という2つの遺伝子異常を有するダブルヒットリンパ腫という高悪性度B細胞性悪性リンパ腫で、有効な治療がなく、その生命予後は2年弱であります。従来、脱メチル化剤という薬はがん抑制遺伝子の働きを回復させることで、抗がん作用を発揮すると考えられていました。今回、木村晋也教授、嬉野博志特任教授、城戸口啓介病院助教らの研究チームは、がん細胞が増えるためには細胞分裂が必要だが、OR-2100は細胞分裂を上手くできなくする作用(有糸分裂異常)を起こすことにより、ダブルヒットリンパ腫に対する高い抗腫瘍効果を発揮することを明らかにしました。現在、悪性リンパ腫に対しては、CHOP 療法と呼ばれる4種類の抗がん剤を組み合わせて行うことが一般的です。しかしダブルヒットリンパ腫に対するCHOP療法の効果は乏しいです。ヒトのダブルヒットリンパ腫を移植したマウスにおいてCHOP療法にOR-2100を併用することで、腫瘍が大きくなることを抑え、副作用も軽微でありました。OR-2100は既存のCHOP療法に併用することにより、これまで治療が非常に困難だったダブルヒットリンパ腫の患者さんに対する、有望な治療選択肢となると考えられます。

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
米国血液学会の公式雑誌 Blood neoplasia, doi.org/10.1016/j.bneo.2025.100155、2025年8月4日にオンラインで出版

【今後の展開】
OR-2100は、2025年7月現在、骨髄異形成症候群の患者さんに対してフェーズ1の臨床試験を行っています(既に新規の患者受け入れは終了しています)。

【その他PRしたい特記事項】
血液がんの患者さんは長い闘病生活を強いられます。長期入院による精神的、経済的負担も多大であります。OR-2100は内服薬であるという特徴があるので、難治性悪性リンパ腫の治療に有効であるだけでなく、外来での通院治療が可能となります。また、入院期間を最小限に減らすことで、患者さんの入院前の生活を取り戻すことにも貢献する可能性をもつと考えています。

【researchmapのリンク先】
医学部創薬科学共同研究講座 特任教授 嬉野 博志
https://researchmap.jp/hrsn

 

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【本件に関する問い合わせ先】
0952-34-2298 佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科および創薬科学共同研究講座

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