本学卒業生が在学中の研究成果により日本中間子科学会若手奨励賞を受賞

【概要】

佐賀大学大学院工学系研究科博士後期課程修了生の徐興亮君が日本中間子科学会の2019年度若手奨励賞を受賞しました。

【本文】

2017年に本学の工学系研究科博士後期課程を修了した留学生徐興亮君(現在中国浙江科技学院,Zhejiang University of Science and Technology講師)が2019年度の日本中間子科学会若手奨励賞を受賞しました。受賞内容は、本学の博士課程時の研究業績である「幾何学的磁気フラストレーションを有するマルチフェロイック物質Co2(OD)3X/ Co2(OH)3X (X=Cl, Br)の動的磁気ゆらぎのμSR法による研究」です。

(指導教員:鄭 旭光 教授,山内 一宏 准教授)。

本賞は、中間子科学の発展に貢献しうる優秀な論文を発表した若手会員を称え、学会をより活性化するために制定され、平成22年度から実施されています。表彰の対象は、博士の学位取得後10年以内の会員(博士の学位未取得者も含む)で、毎年2名を上限として選出され(通常1名、年度によっては欠員)、2019年度の受賞者は1名です。

徐君は指導教員らとともに、佐賀大学の所属研究室が発見した新規マルチフェロイック物質Co2(OD)3X/Co2(OH)3X (X=Cl, Br)の発生メカニズムである水素・重水素の量子原子効果及び相転移を、先端的な研究手段であるミュオン・スピン緩和(μSR)という実験方法を用いて、解明しました。これは同時にμSRの強誘電転移への直接観察成功例となりました。Physical Review Bなどに発表されたこれらの研究成果が高く評価され、受賞に至りました。受賞内容の紹介は日本中間子学会のWEBサイトに掲載されています(http://jmeson.org/2020/03/09/post-751/)。

 

受賞対象の発表論文

1.“Critical slowing of quantum atomic deuterium/hydrogen with features of multiferroicity in the geometrically frustrated system Co2(OD)3Cl/Co2(OH)3Cl” X.L. Xu, D.D. Meng, X.G. Zheng, I. Yamauchi, I. Watanabe, Q.X. Guo, Phys. Rev. B 95(2017) 024111/1-10.

2.”Hydrogen/deuterium dynamics in hydroxyl salts Co2(OH)3Br/Co2(OD)3Br revealed by muon spin relaxation” X.L. Xu, X.G. Zheng, I. Watanabe, Materials 12(2019) 2135/1-10.

 

 

 

*中間子科学とは(日本中間子科学会HPより抜粋)

“湯川秀樹先生が中間子論の提唱によりノーベル賞を受賞されたことから、電子と陽子の中間の質量を持つ粒子「中間子」は、日本において馴染みの深い素粒子です。実験研究の分野では、カナダ、米国、スイスにおいてミュオン、パイオンを大量に発生させる中間子工場が建設された頃から、東京大学グループを中心とした日本の大きな貢献があります。ミュオンを物性研究に用いるミュオンスピン回転・緩和法における様々な手法の開発、また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)における世界初のパルスミュオン施設の建設等です。我々は、レプトンであるミュオンとパイオン等のメソンを含めて「中間子」と呼び、中間子科学連絡会を組織し、物理、化学、生物、材料分野における多数の研究者が協力して、中間子科学の研究を世界で主導権をもって発展させてきました。”

 

 

 

【本件に関する問い合わせ先】

佐賀大学理工学部物理科学科 

教授 鄭 旭光  E-mail:zheng@cc.saga-u.ac.jp

 

戻る

TOP