故・中村 哲 医師、新種昆虫の学名に

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【概要】

 日本学術振興会外国人特別研究員のイルサイド・アイマン博士(Elsayed K. Ayman;東京大学大学院理学系研究科附属植物園)や佐賀大学農学部の徳田誠准教授らの研究チームは、佐賀県の多良岳においてミズメ(カバノキ科)の葉に虫こぶを形成するタマバエ(ハエ目タマバエ科)の新種を発見しました。

 このタマバエは、Massalongia属という国内初記録の属の昆虫で、アフガニスタンの復興に尽力され、昨年12月に凶弾に倒れられた故・中村 哲医師にちなみ、Massalongia nakamuratetsui と命名されました(末尾のiは人名に付ける接尾辞。和名はミズメタマバエ)。

 

【本文】

 イルサイド博士や徳田准教授らは、多良岳でミズメから発見されたタマバエの形態的特徴を確認した結果、本種は日本未記録のMassalongia 属であり、かつ、海外産の既知種とは明確な相違点があるため新種であるとの結論に達しました。また、遺伝子解析も含めた検討の結果、これまでユーラシア大陸のみに分布すると考えられていたMassalongia 属がアメリカ大陸にも分布していることが明らかになりました。

 そして、ミズメタマバエの新種報告のための原稿を作成し、その学名について検討していたちょうどその日に中村哲医師の訃報に接し、大きな衝撃を受けました。

 そこで、中村医師の功績を後の世代に伝え、一人でも多くの方にその精神を受け継いでもらいたいという願いを込め、この新種を、中村医師にちなんで命名させていただきたいと思い至りました。

 命名にあたっては、中村医師が現地代表を務められていたペシャワール会の事務局を通じてご遺族の皆様に連絡を差し上げ、ご了承いただいた上で、今回の新種の学名として使用させていただきました。

 

 論文中での中村医師への献名につきましてご了承下さいましたご遺族の皆様や、やりとりの過程で多大なご協力を頂きましたペシャワール会事務局の皆様に厚くお礼申し上げます。

 

 本論文は、2020年8月11日付で、動物分類学の国際誌ZooKeysからオンライン出版されます。

 

【論文情報】

Elsayed AK, Skuhravá M, Ohta K, Yoshida S, Tokuda M (2020) Revision of the birch-associated genus Massalongia (Diptera, Cecidomyiidae), with description of a new species from Japan and a taxonomic key to worldwide species. ZooKeys 958: 1–27.
 https://doi.org/10.3897/zookeys.958.54300

 

 

【本件に関する問い合わせ先】

論文および新種のタマバエに関して

佐賀大学農学部・准教授 徳田誠

(tokudam@cc.saga-u.ac.jp)

 

中村医師に関して

ペシャワール会事務局・事務局長 古川正敏 氏

(peshawar@kkh.biglobe.ne.jp)

 

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