有明海に棲息する小型二枚貝の生活史特性を解明

【研究者】

 代表者:折田 亮1

 分担者や協力者:小森田智大2・一宮睦雄2・堤裕昭2

 1:佐賀大学、:2熊本県立大学

 

【研究成果の概要】

 有明海の泥質浅海域における優占種の一種である小型二枚貝「ヒメカノコアサリ」の生活史特性を明らかにしました。本種は、西日本沿岸の泥質海域においても、時に優占的に出現することが知られていたのですが、いつ生まれて、何年で性成熟し、何年生きるのか?等の生活史に関する情報が不足していました。

 研究代表者らの研究グループは、2013年7月〜2014年9月にかけて、原則月1回のモニタリング調査を実施し、本種が夏に産卵し、夏から秋にかけて成長、冬場に成長が鈍化し、翌年春から夏にかけて急成長し性成熟すること、本種の大半が一年で世代交代していることを明らかにしました(表1)。また、底質の嫌気化(注1)の程度が異なることが、本種の成長速度や生残パターンに違いをもたらすことも見出しました。

 有明海の泥質浅海域では、夏季に底層水が貧酸素化し、生残できる底生動物(ベントス)の種類が限られています。本種のように、貧酸素環境下でも生残できる生物は、夏季貧酸素化する有明海の生態系を駆動する役割の一端を担います。本研究により、本種は貧酸素化が深刻化する前の春〜初夏にかけて急成長する特性を有し、有明海の夏季の物質循環に大きく貢献している生物であることが分かりました。本研究成果は、夏、貧酸素化する有明海の生態系を考える上で、本種が担う役割の重要性を示しました。

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】

掲載誌名:Plankton & Benthos Research

オンライン掲載日:2021年11月18日

論文タイトル:Population dynamics of a hypoxia-tolerant bivalve: A comparison of two sites in the inner part of Ariake Bay, Japan.

著者: Ryo Orita, Tomohiro Komorita, Mutsuo Ichinomiya & Hiroaki Tsutsumi

 

【今後の展望】

 本種の海の貧酸素化に対する耐性メカニズムは未だ分かっておらず、今後は、本種の貧酸素耐性に関わる生理プロセスを解き明かす研究にも取り組みたいと考えています。

 

【用語解説】

(注1)底質の嫌気化:底層水の貧酸素化に伴い、海底堆積物中の酸化還元環境がより還元的になること。

 

【教員活動DBのリンク先】

https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.3330822c1632a7af.html

 

【本件に関する問い合わせ先】

 佐賀大学農学部 折田 亮

 電話 0952(28)8763

 電子メール ss7427(at)cc.saga-u.ac.jp

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