佐賀大学開発中の脱メチル化阻害剤は、慢性骨髄性白血病幹(かん)細胞にも有効

【研究者】

 佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科 教授 木村 晋也

 佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科 講師 嬉野 博志

 佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科 医員 蒲池 和晴 他

 

【研究成果の概要】

 佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科の木村晋也教授、嬉野博志講師、蒲池和晴医員らのグループは、現在佐賀大学、国立がんセンターと大原薬品工業で共同開発中の経口脱メチル化剤OR-2100が、慢性骨髄性白血病(CML)に対する特効薬チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の効果を高め、さらにTKIが無効な白血病幹(かん)細胞にも有効であることを見出した。この結果は、TKIとOR-2100の併用によってCML治療が更に進化することが期待され、英文誌 Cancer Lettersオンライン版に2021年12月4日発表された。

 

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】

 Cancer Letters

 

【開発の背景】

 特効薬TKIはCMLの予後を劇的に改善し、TKIの内服を継続さえすればCMLで死ぬことはほとんど無くなった。しかしTKI長期使用による副作用や高額な医療費負担が問題となってきた。最近、TKI治療で白血病細胞が一定期間検出されない患者の約半数で、TKI中止後も再発しないことが報告され、完治も望めるようになってきた。より多くのCML患者で完治を目指すためには、TKIの治療効果をさらに高めるだけでなく、TKI中止後再発の原因である白血病幹細胞も駆逐することが必要である。TKIが効きにくくなる理由のひとつにDNAメチル化異常が関与しており、我々はメチル化を促進するDNMT1がCML治療の標的となる可能性があると考えた。

 

【研究の内容】

 OR-2100はCML細胞に対し、遺伝子に結合した錆び(メチル化)を剥がす作用を介して、TKIの効果を増強した。また白血病マウスにおいてOR-2100とTKIの併用療法は、副作用を増やすことなく、効果を増強した。白血病細胞には、その発生の大元となる白血病幹細胞が存在する。TKI はやや成長した白血病細胞には有効だが、最も未熟な白血病幹細胞には効かない。そのため、TKI によってほとんどの白血病細胞が死滅しても、白血病幹細胞はごく少数だが生き残り、治療終了後の再発の原因となる。各種の検討でOR-2100は白血病幹細胞にも有効であることを明らかにした。以上よりCMLにおいて、OR-2100はTKIの効果を増強するだけでなく、CMLの白血病幹細胞にも有効であることが示された。

 

【今後の展開】

 我々は、まず急性骨髄性白血病の前段階である骨髄異形成症候群に対するOR-2100の第1相臨床試験を開始する準備を進めている。本試験の結果が良好であれば、CML患者でも検討を進めていきたいと考えている。

 

【教員活動DBのリンク先】

 木村 晋也 教授

  https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.69b4741e14a547d0.html

 

【本件に関する問い合わせ先】

佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科

教授 木村晋也

TEL: 0952-34-2366、 FAX: 0952-34-2017

E-mail: shkimu@cc.saga-u.ac.jp

 

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