心房細動における心房筋変性の解明

【研究者】

 代表者:山口尊則

 分担者や協力者:佐賀大学 野出孝一教授 他

 

【研究成果の概要】

(1)心房細動は脳梗塞や心不全の原因となる最も頻度の高い不整脈の1つです。この心房細動患者さんにおいて、心房細動の発生基盤である心房筋が進行性に変性することは知られていましたが、長年にわたり、その過程は心房の一部が局所的に変性していくものと信じられてきました。しかし、我々は最新の3Dマッピングテクノロジーを用いた研究により、心房変性の過程はむしろ心房全体に均一に生じていることを証明しました。

(2)心筋の変性を顕微鏡で組織学的に評価する方法として、カテーテルを用いて心臓から極小さな心筋切片を採取する「心筋生検」という検査法があります。従来は壁の厚い心室が心筋生検の対象でした。一方、壁の薄い心房は安全面から心筋生検が困難とされ、これまで心房筋の組織学的な評価はほとんど行われていませんでした。今回我々は、独自の手法により心房の特定の部位から安全に生検を行う「心房生検」という手法を開発しました。そしてこの心房生検によって得られた標本を用いて、心房筋変性を組織学的に解析することが可能となりました。

 

この2つの研究成果は、特定の部位からの心房生検により心房全体の変性を組織学的に評価できることを意味しており、心房細動に伴う心房変性の機序の解明が期待できます。

 

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】

Journal of the American Heart Association

2022.03.09オンラインで公開

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.121.024521

 

【今後の展開】

心房筋を安全に採取し、患者さん一人ひとりの心房変性の原因や程度を評価することにより、それに基づく適切な治療が可能になると期待できます。また、心房筋を用いたより詳細な研究により、心房細動の発生や心房変性の機序の解明が期待でき、新しい薬の開発や新しい手術法の開発が期待できます。

 

【その他PRしたい特記事項】

本研究と同時に、心房変性に影響する遺伝的素因の研究(FUTURE-AF研究)も進行中です。

 

【教員活動DBのリンク先】

佐賀大学医学部 循環器内科不整脈グループ

https://www.saga-cardiology.jp/arrhythmia/

山口 尊則 教授

https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.3005e80abad9f04d59c123490551be02.html

 

【本件に関する問い合わせ先】

佐賀大学医学部先進不整脈治療学講座  教授 山口 尊則

TEL: 0952-34-2120

E-mail: takanori@cc.saga-u.ac.jp

 

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