心筋梗塞サイズを縮小し心不全を予防するワクチン開発に成功
【研究者】
代表者:佐賀大学医学部循環器内科教授 野出 孝一
分担者:佐賀大学医学部医工循環器学教授 白木 綾
佐賀大学医学部循環器内科特任助教(現・ネーションワイド小児病院) 木塚 貴浩
大阪大学大学院医学研究科教授 中神 啓徳
【研究成果の概要】
抗炎症作用・抗血栓作用を有するEET(エポキシエイコサトリエン酸)を分解する酵素である可溶性エポキシドヒドロラーゼ(soluble epoxide hydrolase: sEH)に対するワクチンを開発しました。このワクチンを投与することにより、ラットの心筋梗塞モデルにて心臓の側副血行路を増加させ、心筋梗塞の範囲を対照群と比較すると縮小させることを明らかにしました。この機序として、可溶性エポキシドヒドロラーゼに対するワクチンを投与することで、血中のEET(エポキシエイコサトリエン酸)の濃度を高めることにより、血管拡張作用、抗炎症作用、血栓抑制作用、抗血小板凝集抑制作用、血管新生作用などにより心筋梗塞を改善したと考えられ、今後狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患や心筋炎等の心不全の治療と予防に有効である可能性があります。
この可溶性エポキシドヒドロラーゼに対するワクチンは世界初であり、疾患に対する有効性を証明したのも今回の論文が初めてです。
EET(エポキシエイコサトリエン酸)はアラキドン酸から代謝される脂肪酸の一つです。ロイコトリエンやトロンボキサンもアラキドン酸から代謝される脂肪酸ですが、これに関する治療薬は現在多く臨床で使用されています。一方、EET(エポキシエイコサトリエン酸)に関する治療薬は未だ市場には出ていませんが、今後このワクチンを臨床で評価をし、有効性が示されると初めてのEET(エポキシエイコサトリエン酸)に関する創薬となります。
【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
Scientific Reports published online (2022/4/28)。A Novel Soluble Epoxide Hydrolase Vaccine Protects Murine Cardiac Muscle Against Myocardial Infarction. Scientific Reports. (2022)12:6923.
【今後の展開】
現時点では、ラットでの効果の評価に留まっているため、ヒト化ワクチンの開発に着手しています。また、心筋梗塞を起こしてからワクチンを打つのでは抗体が産生されるまでに時間がかかるため、即時治療が可能なモノクロ―ル抗体の開発を国際医療福祉大学との共同研究で行っています。また、下肢虚血モデルや心不全モデル、高血圧モデル、脳梗塞モデル等、他の疾患モデルでの応用を進めています。
【その他PRしたい特記事項】
現在国内特許出願中
【教員活動DBのリンク先】
野出孝一
https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.038fcd15408ca8bc.html
白木 綾・さがシーズ Musubimeホームページ
https://musubime.saga-u.ac.jp/medicine/shiraki_aya/
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学医学部 循環器内科
教授 野出 孝一
TEL:0952-34-2443
E-mail:node@cc.saga-u.ac.jp