文部科学省の令和3年度DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業に採択「病院と地域の助産師・保健師による切れ目ない支援を提供するリスキルプログラム」

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概要:

 佐賀大学では、昨年度、文部科学省の令和2年度就職転職支援のためのリカレント教育推進事業「産科・地域母子保健分野の助産師不足・偏在を解決するための潜在助産師のリカレント教育プログラム開発・実施」を受託し、事業を展開しました。

 昨年度は、潜在助産師の方の職場復帰を目的とし、潜在助産師の就職・転職支援のためのリカレント教育(「病院・診療所」「地域母子保健」「知識アップデート」の3コース)に取り組み、50名が受講しました。再就職・転職希望者向けのプログラムでしたが、受講者の半数超は学び直し目的の在職者でした。受講動機は、病院助産師では、産前産後のケアの経験が少ない、育児休暇明け、産婦人科以外の部署で働いているなどの理由がありました。地域母子保健では、母子支援のためのスキルを向上させたい、自信をもって働きたい、病院や教育機関退職後に地域で活動したいなどがありました。

 これらのニーズに応えるべく、今年度の事業では、病院・行政、そしてリスキルのニーズを持った受講者一人ひとりの特性や希望に応じて自由に組み立てられるカリキュラム構成とし、令和3年度DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業コースⅢ(重要分野のリカレントプログラム開発・実施)「リスキル」応募し、「病院と地域の助産師・保健師による切れ目ない支援を提供するリスキルプログラム」採択されました。

 超少子高齢化のなかで、高齢出産や産後うつ、虐待の増加に伴い手厚い医療・ケアを必要としている妊産婦が増えています。また、母子保健法の一部改正に伴い、妊娠期から子育て期までの継続一貫したケアを提供するなどの新たな役割も求められています。しかしこれを支える助産師は不足や偏在がみられるなど、妊産婦や家族に十分なケアを提供できていないところもあり、地域格差が広がっています。

 そこで、本事業では、佐賀県の産科を有す5病院の助産師市町の助産師と保健師を対象に、妊娠期から子育て期まで切れ目ない支援を実現するためのリスキリングを行います。助産師や保健師が少ない地域において、人材一人ひとりの専門的知識・スキルの向上により、地域の母子保健の質を確保しようとするプログラムです。

リスキリングとは、業務内容が変化することに伴って、新たな業務に必要になる知識やスキルを修得するために学習することを言います。リスキルとは、従業員に新しい能力や技術を修得してもらうことで、企業の生産性向上や従業員自身の能力向上を目指します。

 

事業運営体制:

 事業は、佐賀大学医学部看護学科母性看護・助産学領域を中心に、佐賀県医務課・こども家庭課、佐賀労働局、佐賀県医師会、佐賀県助産師会、佐賀県医療センター好生館看護学院の連携体制のもとで行います。

 また、佐賀県と同じ課題を抱える地域との将来のプログラムの共有や適用することを考え、宮崎大学、鹿児島大学、神奈川県の湘南医療大学も参加しています。

目的:

 本事業で、地域における妊娠期から出産・子育て期にわたる切れ目ない支援を提供できる助産師・保健師のリスキリングを行います。

            

対象者:

 佐賀県の産科を有する病院の3年目以上の助産師10名

 佐賀県の市町の母子保健に関わる助産師・保健師10名

 

プログラム内容:

 プログラムは、病院で勤務する助産師と地域母子保健分野で活動する助産師・保健師の共通カリキュラムです。地域母子包括ケアに関する必修科目(23科目51時間)に加え選択科目(27科目83時間)を準備しています。病院・行政、そしてリスキルのニーズを盛った受講者一人ひとりの特性や希望に応じて、マイ・カリキュラムを作成することができます。

 受講は60時間以上で、3か月間の間に計画的に履修していただきます。

 内容は表に示したように、助産師の4つのコンピテンシー(倫理的感応力、マタニティケア能力、ウィメンズヘルスケア能力、専門的自律能力)1母子保健法の一部改正などに伴う新しい事業・社会課題・DX等に係るポータブルスキル2に関する科目で構成しています。

 講師は、佐賀県内の教育機関や病院、地域で活動する助産師、保健師等を中心に、産科・周産期学、胎児・新生児学、人類遺伝学、ウェブ情報、小児看護学、精神看護学、フォレンシング看護学、理学療法学、誤用・意味論、教授設計の専門家、県や市の行政関係者、DVセンター所長、NPO法人など多様な講師38名が関わっています。

 ※1 コンピテンシー:優れた成果を創出する個人の能力・行動特性のこと。

 ※2 ポータブルスキル:職業や時代背景に捉われない持ち出し可能なスキルのこと。

部分受講制度:

 本事業では、プログラム(2つのリスキルモデル)受講者以外にも、母子保健に関わる方でしたら、どなたでも受講できる部分受講制度を設けています。申し込みは、3期に分け、第1期申し込みは8月1日から受け付けます。受講開始は9月26日からとなります。オンデマンド配信によるウェブ受講が中心ですが、第1期部分受講者のみ、定員に余裕があれば対面授業に参加できます。受講料は、文部科学省の助成により、2時間1,000円としています。

 詳細は、ホームページでご案内します。

佐賀県助産師リカレント教育プログラム https://jo34.med.saga-u.ac.jp/

 

将来の展開:

 「病院と地域の助産師・保健師による切れ目ない支援を提供するリスキルプログラム」佐賀モデルを構築できたら、他県へも展開し、妊産婦やその家族に切れ目ない支援を提供し、誰一人取りに越されず、安心・安全で、健康でいきいきした町、子育てに優しい町づくりに貢献したいと思います。

 佐賀県の母子保健関係者の人材は不足していますが、小さな力でも集まれば、大きな力になると信じています。地方からの挑戦を応援ください。

【参考資料】:

https://www.mext.go.jp/content/20220624-mxt_syogai03-000020133_3.pdf

 

【本件に関する問い合わせ先】
 佐賀大学医学部看護学科
 佐賀県助産師リカレント教育事業実施委員会
 委員長 佐藤 珠美(母性看護・助産学領域教授)
 TEL:0952-34-2550 E-mail: tsatoh@cc.saga-u.ac.jp

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