佐賀大学大学院農学研究科の学生が日本生物工学会学会第29回九州支部福岡大会において学生賞を受賞

【受賞者】
佐賀大学大学院農学研究科
修士課程2年 前田 空 (まえだ そら)

【受賞した賞の名称】
学生賞(修士の部)

【受賞先】
日本生物工学会 第29回九州支部福岡大会

【受賞した日】
2023年12月4日

【受賞した研究の題目】
微生物菌叢との共培養特異的な白麹菌の二次代謝物質生産能

著者:前田空1、永野幸生2、Myat Htoo San2、二神泰基3、小林元太1、後藤正利1
佐賀大学大学院・農学研究科1、総合分析実験センター2、鹿児島大学大学院・農林水産学研究科3

【受賞につながった研究内容】
 糸状菌の一種である白麹菌Aspergillus luchuensis mut. kawachii はクエン酸を大量に生産する性質を示すため、温暖地での焼酎の製造に用いられています。産業界で古くから利用されている麹菌の一次代謝については、世界中で多くの研究成果が蓄積しています。しかし、麹菌の二次代謝についての研究については、未知の部分が多いです。微生物の一次代謝は、細胞の増殖(菌糸の伸長)期間に行われる細胞を構成する成分やエネルギーを合成するための代謝です。一方、培養環境下で栄養素が枯渇する頃から始まる二次代謝は、細胞増殖後に行われる代謝で、栄養枯渇が解消するのを待つため休眠細胞(胞子)となったり、与えられた環境下で適切に余生を過ごすために、二次代謝産物を細胞外、周囲に放出して、周りに生息する生物に影響を与えたり、周りの生物から刺激を受けて相互作用します。
 受賞した研究では、まず、白麹菌と共培養する微生物叢(複合微生物系)を佐賀県内の土50種類から複合微生物系(微生物叢)を取得しました。その微生物叢を培養中の白麹菌へ添加して、共培養を開始しました。その結果、ある特定の微生物叢と白麹菌を一緒に培養した時だけに推定二次代謝物質を生産することがわかりました。続いて、白麹菌の単独培養時と微生物叢との共培養時での白麹菌の全遺伝子の発現の相違をそれぞれ調べました。その結果、未知の二次代謝物質合成に関与すると予測される6種類の遺伝子群において、遺伝子が発現上昇していることが明らかになりました。以上の実験結果より、白麹菌をある特定の微生物叢と共培養することで、潜在的に白麹菌が保有していた新規な二次代謝物質の生産能力を覚醒させることができることを示しました。

【その他PRしたい特記事項】
 微生物学、応用微生物学では、通常、研究対象微生物を純粋に1種類だけにして研究を進めます。しかし、純粋な1種類だけの白麹菌を培養して二次代謝産物を探索しても、新規な物質の発見は困難であると考え、自然界を模して他の微生物と白麹菌を共培養することで、白麹菌の眠っていた二次代謝物質生産能が覚醒できるのではないかと仮定して、本研究を開始しました。その結果、共培養により白麹菌の新たな二次代謝物質生産能力を見出すことができました。

【教員活動DBのリンク先】
https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.47f0740a91a80f29.html

 

【本件に関する問い合わせ先】
 佐賀大学農学部生命機能科学コース
 後藤 正利
 E-mail: mgoto@cc.saga-u.ac.jp

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