自己免疫性1型糖尿病の発症に関わる分子を発見

【研究者】
 代表者:三根敬一朗(佐賀大学医学部/特任助教)
     永淵正法(佐賀大学医学部/特任教授)
     安西慶三(佐賀大学医学部/教授)
 共著者:赤澤諭(長崎大学医歯薬学総合研究科/助教)
     阿比留教生(長崎大学医歯薬学総合研究科/准教授)
     森仁恵(佐賀大学医学部/博士課程)
     栗崎宏憲(九州大学医学研究院保健学部門/講師)
     下田和哉(宮崎大学医学部/教授)
     吉開泰信(九州大学生体防御医学研究所/教授)
     高橋宏和(佐賀大学医学部附属病院肝疾患センター/特任教授)

 

【研究成果の概要】
 1型糖尿病はインスリン産生細胞(膵β細胞)が破壊されることで高血糖を来たす疾患です。その発症機序は不明な点が多く、膵β細胞の破壊に至る過程は環境因子と遺伝因子の相互作用によって複雑で多岐にわたると推察されています。我々はこれまでに、サイトカインシグナル伝達に関わるTyrosine kinase 2(TYK2)という分子の発現低下が、ウイルス感染によって発症する1型糖尿病(ウイルス性糖尿病)の発症リスクとなることを報告してきました(Nat Commun 2015、EBioMedicine 2015, 2017, BBRC 2020, Genes 2021など)。しかし、自己免疫性1型糖尿病(免疫細胞が膵β細胞を破壊してしまうことで発症する1型糖尿病)におけるTYK2の役割は分かっていませんでした。
 今回、我々は自己免疫性1型糖尿病モデル動物を用いてTYK2がどの様にその発症に関わっているかを解析しました。その結果、TYK2を欠損すると、(1)膵β細胞の炎症反応が抑制され、(2)樹状細胞のCD8 T細胞を増殖させる能力が低下し、(3)CD8 T細胞が膵β細胞を攻撃する能力が低下することで、自己免疫性1型糖尿病の発症が抑制されることを見出しました。さらに、TYK2阻害剤の投与によってモデル動物の自己免疫性1型糖尿病の発症を抑制できることも明らかにしました(図1)。

 

 以上は、様々な細胞でTYK2を介するシグナル伝達が膵β細胞への自己免疫応答の惹起に関与していることを示した初の報告となりました。これらの結果から、自己免疫性1型糖尿病においては、TYK2を抑制すると発症の抑制に繋がると考えられました。しかし、ウイルス性糖尿病においては、TYK2を抑制すると発症へと繋がります。我々の一連の研究は、同じ疾患であっても発症機序によって役割が全く異なる分子があることを世界で初めて示し、有効な予防法や治療法の開発のためには、様々な角度からの研究が必須であることを伝える重要な成果となりました(図2)。本研究成果は、2024年2月13日に国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

 

【発表論文】
TYK2 signaling promotes the development of autoreactive CD8+ cytotoxic T lymphocytes and type 1 diabetes. Nat Commun 15, 1337 (2024).
(DOI, https://doi.org/10.1038/s41467-024-45573-9)
(Springer Nature, 2024年2月13日掲載)

【今後の展開】
 今回の研究から1型糖尿病の根絶のためには、ウイルスなどの外来微生物から身を守りつつ、自己免疫を抑制する方法の開発が必要であると考えられました。一連の研究成果を基盤として、1型糖尿病の発症に関与すると示唆されるウイルスに対するワクチンの開発や、感染制御と免疫抑制を両立する方法の開発などへ繋げていきます。

【その他PRしたい特記事項】
 本研究は、認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク(https://japan-iddm.net/)、公益財団法人ノバルティス科学振興財団(https://japanfoundation.novartis.org/index.html)、公益財団法人日本糖尿病財団(http://www.j-df.or.jp/index.html)のご支援のもと実施しました。佐賀大学総合分析実験センター生物資源開発部門、ならびに機器分析部門のご支援、ご指導によって本研究を実施することが出来ました(https://www.iac.saga-u.ac.jp/index.html)。研究の推進にご協力いただきました皆様に深謝致します。

【教員活動DBのリンク先】
https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.7d441dad17b9bab8.html

 

 

【本件に関する問い合わせ先】
 永淵正法
 佐賀大学医学部内科学講座
 〒849-8501 佐賀県佐賀市鍋島5-1-1
 TEL:0952-34-2146
 E-mail:su2733@cc.saga-u.ac.jp
 Web:http://diabetic-virus-action.net/

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