日本におけるヤマノイモ属のタマバエと2種の新種の統合的記載
【研究者】
代表者:カミスイルサイド アイマン 助教(佐賀大学農学部・鹿児島大学大学院連合農学研究科)
分担者:望月 昂 助教(東京大学理学系研究科)、川北 篤 教授(東京大学理学系研究科)
【研究成果の概要】
タマバエ類(ハエ目)は動物界で最も多様性に富む昆虫群であり、農業害虫として広く知られています。その卓越した多様性と経済的重要性にもかかわらず、大多数の種は未記載のままであり、その生態学的役割は十分に解明されていません。我々の研究チームは、日本における野生のヤマノイモ属に関連する2つの新種のタマバエを発見し、この魅力的で未解明な相互作用について新たな知見を提供しました。
ヤマノイモ属は世界で4番目に重要な塊茎作物として世界的に重要であるにもかかわらず、この属に寄生するタマバエは世界でわずか6種しか記録されておらず、そのうち正式に記載されたのは3種のみです。その中でも、日本では唯一知られていた種であるDasineura dioscoreae(Shinji, 1939)は、ウチワドコロに葉えいを形成する稀少種として知られていましたが、今回の研究で新たな発見がありました。
本研究では、Dasineura dioscoreaeの再発見と再記載を行うとともに、以下の2つの未記載種を発見しました。
●Schizomyia blastianthus Elsayed, sp. nov.: オニドコロ、ウチワドコロ、キクバドコロ、タチドコロ、およびカエデドコロを含む複数のヤマノイモ属植物の雄花芽で発育する。
●Ametrodiplosis aderces Elsayed, sp. nov.: ウチワドコロおよびキクバドコロの雄花芽で発育する。
本研究の結果、全世界で600種以上が含まれるとされるヤマノイモ属が、これまで考えられていたよりもはるかに多くのタマバエ類を宿すことが示唆されました。特に、これらのタマバエが雄花芽でのみ発育するという発見は、花粉媒介者としての潜在的な役割について興味深い疑問を投げかけています。タマバエが雌花芽への産卵を避ける理由や、この行動が花粉媒介の役割に関連しているかどうかを解明するためには、さらなる研究が必要です。
【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
掲載誌名:Zoologischer Anzeiger(2024年12月30日出版)
発行:Elsevier
論文表題:Gall midges of wild yam (Dioscorea: Dioscoreaceae) in Japan, with integrative descriptions of two new species
【その他】
本成果の一部はJSPS科学研究費(20K15859、P19087、22K20582)の助成を受けて実施されました。
論文へのリンク:https://doi.org/10.1016/j.jcz.2024.12.010
佐賀大学農学部システム生態学分野(カミスイルサイド)
HP:http://systeco.ag.saga-u.ac.jp/Home.html/Home.html
【researchmapのリンク先】
カミスイルサイド アイマン 助教
https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.9a15e34fc4720aa9.html
https://researchmap.jp/elsayedak