桑菱茶の短期摂取で血糖値の変動が抑えられることを確認:糖尿病予防に期待

 

【研究者】
 代表者:医学部社会医学講座予防医学分野 教授 原 めぐみ
 分担者や協力者:
  医学部社会医学講座予防医学分野 准教授 西田 裕一郎
  医学部地域医療科学教育研究センター 数理解析部門 教授 川口 淳
  医学部地域医療科学教育研究センター 数理解析部門 大学院生 新川 裕也

 共同研究機関:
  西九州大学 健康栄養学部 健康栄養学科 教授 安田 みどり
  神埼市役所 産業振興部 商工観光課 商工振興係

【研究成果の概要】
背景・目的
 食後の急激な血糖上昇(食後高血糖)は、糖尿病や心疾患のリスク因子とされ、健康な人にとっても無視できません。デオキシノジリマイシン(DNJ)やポリフェノールには血糖上昇を抑える作用があることが知られており、桑の葉と菱の外皮から作られる桑菱茶にも同様の効果が期待されてきました。これまで単回摂取による血糖上昇抑制効果は報告されていました。この研究では、継続的に飲用した場合の食後血糖上昇抑制効果や安全性を評価することを目的としています。

 研究方法
 健常成人31名を対象に、ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を実施しました。参加者は、毎食前に桑菱茶またはプラセボ茶を2週間摂取し、上腕に装着した持続血糖測定装置(CGM)により血糖値を15分ごとに記録しました。記録された各期間の血糖値から変動係数を計算し、桑菱茶期間とプラセボ茶期間で比較しました。また、各期間の初日には桑養茶またはプラセボ茶を飲用した後、基準食を摂取し、食後血糖値の変動を記録し曲線下面積(AUC)を計算し比較しました。さらに、各期間の前後で採血を行い、桑菱茶期間とプラセボ茶期間での血液データの変化量を比較しました。

 主な結果
 桑菱茶を飲用した期間では、血糖値の変動係数(CV)が有意に低下(平均差0.02、p=0.0006)しました。基準食摂取後1時間の血糖値の上昇(AUC)も有意に抑制されました(p=0.02)。血糖コントロールの指標である 1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG) が有意に増加しました(p=0.005)。
 安全性について、低血糖の発生や肝機能・腎機能・炎症マーカー、自覚症状には有害な変化はありませんでした。

結論
 桑菱茶の2週間継続摂取により食後血糖値の上昇を有意に抑制する効果を見出しました。また、安全性についても問題がないことが確認されました。これらの結果から、桑菱茶の摂取が糖尿病予防や管理において有用な自然療法の一つである可能性が示唆されました。

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
Shinkawa Y, Yasuda M, Nishida Y, Tokiya M, Takagi Y, Matsumoto A, Kawaguchi A, Hara M. Evaluation of the Postprandial-Hyperglycemia-Suppressing Effects and Safety of Short-Term Intake of Mulberry Leaf and Water Chestnut Tea: A Randomized Double-Blind Placebo-Controlled Crossover Trial. Nutrients 2025, 17(14), 2308; https://doi.org/10.3390/nu17142308

【今後の展開】
 血糖上昇抑制効果以外の健康効果(睡眠や血中脂質など)についても検討。

【本件に関する問い合わせ先】
 論文内容:佐賀大学医学部社会医学講座予防医学分野 0952-34-2289
 商品内容:神埼市役所 産業振興部 商工観光課 商工振興係 0952-37-0107

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