「0.017の壁」を、共感の連帯で書き換える 2026年・沖縄県久米島。第1回国際島嶼GXモデルアカデミッ


国連大学のチリツィ・マルワラ学長(写真左)を囲んで
(写真右から坂本麻衣子佐賀大学副学長・山口しのぶ国連大学サステイナビリティ高等研究所長・宮崎桂JICA副理事長)
企画の背景:シンボルの誕生では変わらない「岩盤」
本対談の出発点は、「女性が女性を純粋に応援し、次世代へ確かなバトンを繋ぎたい」という企画者の強い願いにあります。2025年に女性首相が誕生し、社会の9割が多様性に賛成しながらも実態としての改善はわずか、ジェンダー・ギャップ指数では0.017ポイントに留まるという冷徹な現実です。2026年3月26日から27日にかけて、沖縄県久米島で、佐賀大学海洋エネルギー研究所が主催した「第1回国際島嶼GXモデルアカデミックサミット」に出席した国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の山口しのぶ所長と独立行政法人国際協力機構(JICA)の宮崎桂副理事長・最高サステイナビリティ責任者(CSO)と佐賀大学の坂本麻衣子国際担当副学長が結んだ「本音の連帯」を記録しました。
「0.017の壁」を見抜く——医学部の現場から:
坂本麻衣子(佐賀大学副学長): 「地方大学の医学部でも、今や学生の半分以上が女子である年がたくさんあります。かつては、『女子が多すぎると医者を辞めてしまうから問題だ』という時代もありました。しかし現状は、女性医師の層は厚いのに、意思決定の場に近づくほど男性ばかりになるという不思議な現象が続いています。私は、教授選考などの『評価のモノサシ』を書き換えたいと考えています。論文数や研究費の獲得数という単なる数字だけでなく、教育能力やリーダーシップといった高い『人間力』も正当に評価する仕組みこそが、構造を壊す鍵になると考えています。」

坂本麻衣子佐賀大学国際担当副学長
女性教員と女子学生・研究者の参加を促進する:
山口しのぶ(国連大学サステイナビリティ高等研究所長): 「前職の東京工業大学で教育・研究に携わったのは2002年でしたが、当時の女性教員数は全体の3%でした。女子生徒の増加を目指した戦略には同時に女性教員にとっても働きやすい環境を創生することが重要でした。そのためにも、在任中に評議員に立候補し、女性初の評議員として選出されました。トップ層に加わったことで、今まで届かなかった様々な声や意見を反映することができるようになったと思います。長いキャリアを通じて働きやすい環境を整えるためには、インフラの充実と同時にフレキシブルな働き方や時間管理が必要であったと思います。評議員として、各部局の代表と直接議論することで、具体的なルールを変え、環境を整えることができたのだと思います。」

山口しのぶ国連大学サステイナビリティ高等研究所長(写真中央)
山口(UNU-IAS): 「2019年に国連大学サステイナビリティ高等研究所長に就任した際、国連大学では既に多くの女性研究者が活躍していました。働きやすい環境整備のためには、Work-life balance を組織として促進していく事が重要でした。わたくしが所属していたヨーロッパに位置する国際機関では、休暇は『権利』であると同時に『義務』として扱われていました。年始に全員で有給休暇の計画を決める際に、まずは、Directorが最初にまとまった休暇計画を宣言するというのが印象的でした。『マネジメントが率先して休暇をとるから、スタッフも休める』という空気、つまり『効果的な成果を出すために休息する』という環境をデザインすることが、持続可能な組織には不可欠ということを学びました。」

・リーダーであるからこそ見えて来る景色をめざして:
宮崎(JICA副理事長): 「JICAでも役員12人中4人が女性(3分の1)ということで、一定程度の割合は確保されていますが、その一方で、若手の、特に女性職員の多くが『管理職になる自信がない』と感じている現状があることも事実です。確かに、管理職は忙しいのですが、管理職になってこそ見えて来る景色があり、だからこそ人間として成長できることも知って欲しい。それを実現するためにも、育児や介護があっても、男女共に誰もがハッピーになる働き方が前提となる仕組みやマインドを導入したい。それが私の希望です。」

宮崎桂JICA副理事長
多様な価値観が結果として全員をハッピーに:
宮崎(JICA):「『残業はしたくない』『休日は休みたい』とストレートに主張する外国籍の職社員が増えたことで、日本人を含む全社員が働きやすくなった会社の例も聞いています。山口先生もおっしゃっておられることと共通していると思いますが、女性、そして国籍など、多様な意見を取り入れることで、社会に良い変革が起きると思っています。」

「17%の扉」を開く——失敗を恐れず世界へ:
宮崎(JICA): 「今の日本のパスポート保有率は約17%と非常に低い水準です。学生には『井の中の蛙』にならず、どんどん海外を見てほしいと思います。海外を見ることは、日本を知ることになります。失敗することもあるでしょうが、もし、失敗すれば修正すればいい、その度胸を持ってほしいです。」

山口(UNU-IAS): 「私のキャリアも大学時代のアメリカへの交換留学から始まり、17年ほど海外で過ごしました。外に出て自分の可能性を肌で感じ、そこで得た自信が、次の扉を開く鍵になります。」
自分は決して「完璧」ではない:
周囲から「スーパー・ウーマン」のように見られることがあるが、自身では全くそう思っていない。自分が好きなこと、得意とすることを見つけ、失敗を恐れずに突き進んできた結果が今に至っていると思います。対話の終わり、三人は久米島で、次世代へのメッセージを刻みました。
「あなたは、あなたのままで、世界を動かせる。」

企画後記:
対談に先立ち、国連大学のチリツィ・マルワラ学長が会場を訪れました。学長は、山口所長、宮崎副理事長、坂本副学長の三人が並ぶ姿を見て、「この連帯こそが知の多様性の象徴」と、国際的なトップが、対談の背中を後押しました。対談終了後、山口所長から、「ぜひ第2弾をやりましょう」という力強い言葉が飛び出しました。
この対談を実現させたのは、一人の女性として彼女たちの背中を追い、応援したいという純実な熱意であり、佐賀大学の野出孝一学長が後押ししてくれました。2026年の今、三人のリーダーが久米島で交わした言葉が、私たち一人ひとりの未来への「滑走路」になると信じています。
野出学長が坂本副学長というリーダーを信じて抜擢したように、佐賀大学はこれからも「女性が女性を応援する」文化のハブであり続けます。
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学 学術研究部 研究推進課国際企画室長(矢田)
TEL: 0952-28-8166 Email: kokusai@mail.admin.saga-u.ac.jp


