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令和6年度佐賀大学入学式告辞


このたび入学を迎えた1,667名の新入生の皆さん,そして,本学で学ぶため海外から来日した留学生の皆さん,入学おめでとうございます。佐賀大学を代表して,心から歓迎します。また,新入生を物心両面から支えてこられたご家族の皆様,関係者の皆様にも心からお祝い申し上げます。今日この日を迎えるまでに,大切に育てられ,時には共に喜びを分かち合い,時には意見が衝突したり,と色々なことがあったかと思いますが,立派に成長された姿を目にされ,喜びもひとしおと拝察いたします。


ここで、告辞に先立ち、本年1月に発生しました能登半島地震において犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。被災地域の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

さて、佐賀大学は、明治17年に創設された佐賀師範学校を母体とし、旧制佐賀高等学校及び佐賀青年師範学校との統合によって昭和24年に設立された旧佐賀大学と、昭和51年に開学した佐賀医科大学とが平成15年に統合し、さらに平成16年の国立大学法人化を経て、設置されました。現在は、教育学部、芸術地域デザイン学部、経済学部、医学部、理工学部、農学部の6学部・6研究科体制となっています。佐賀県唯一の国立大学として、地域に根差し、地域と共に未来へ向けて発展し続ける大学づくりを進めています。2020年には、「佐賀大学のこれから -ビジョン2030-」を策定し、10年後の2030年に佐賀大学が目指す姿を「佐賀大学に関わる人々が誇れる大学」、「佐賀大学で学びたいと選ばれる大学」、「地域社会から期待、信頼される大学」と定めました。教育、研究、社会貢献そして大学運営の各分野において教職員一丸となって改革を進めており、その成果は、本日入学された皆さんの人間的な成長に繋がるものと確信しています。

現代の社会は、DXをはじめとしたデジタルサイエンスの目覚ましい発展、カーボンニュートラルの実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)、急速なグローバル化など、これまでの常識が、ごく短期間のうちに一変するような時代です。スマートフォンなどを介した情報技術の発達により、多様な情報に容易に触れることはもとより、映画やテレビを見たり、商品を購入したり、チケットを手配したり、他者とコミュニケーションを取ったり、手のひらの中でおおよそのことが完結します。先日芥川賞を受賞された九段理江さんの「東京都同情塔」では、作品作りに生成AIを利用したことが話題となりましたが、これからは今以上に生活の中へデジタル技術が溶け込み、人々の考え方や行動、日常生活や職業の形態もますます変わっていくことでしょう。まさに社会は、予測困難な時代への転換期にあると言えます。

今日から皆さんは大学生としてのスタートを切りました。大学とは、皆さんが将来、社会へ羽ばたくため、更にはその後の人生を通じて、人として成長していくための土台を作る場所です。これからの社会で活躍していくために、皆さんは大学生活の中で何をすべきでしょうか。

私は、皆さん一人ひとりに、まずは将来の目標をもってもらいたいと思っています。なりたい職業、勉強したいこと、語学やプログラミングなどの習得したいこと、何でも構いません。社会に出たあとの自分を想像して、自分なりの目標を見つけて下さい。目標を持つと、意識が変わり、意識が変わると行動が変わります。なにより日々のやる気が上がって、ポジティブな思考となり、毎日にやりがいと楽しみが出てきます。将来の目標を持つことは、人間的成長のはじめの一歩です。そして、大切なことは、その目標を達成するための一つ一つの努力を決しておろそかにしない、ということです。皆さんが目標に向かって行動する中で直面する全てのやるべきことに正面から向き合い、「このくらいでいいだろう」でなく、「これでもか、これでもか」と懸命に努力を重ねることが必要です。最初から大きなこと、大変なことから取り組むと挫折してしまうかもしれませんので、自分が出来る小さなものから取り掛かってみて下さい。小さな達成感を積み重ねることや自分なりの楽しみを見つけることが努力を継続するコツだと思います。

また、社会は様々な人や文化、制度などの要素が相互に影響し合って成り立っています。必ずしも善と悪といった単純な対立構造で捉えられるものばかりではありません。そのため、物事を自分だけの考え、すなわち一方的な見方だけをしていても上手くはいきません。そこで、相手の立場に立って物事を考えてみて下さい。相手の立場に立って考えてみることで、物事の違う一面が見えてくることがあります。そのことが自らの中に多様性や包摂性を育み、物事の別の価値観を理解することに繋がり、視野が広がることでしょう。視野の広がりは、皆さんの行動を変え、ひいては本当の意味で他者との信頼関係の構築や協働を実現してくれます。

皆さんの目の前には、無限の可能性が広がっています。自分の専門分野を学修することだけでなく、異なる分野の勉強にも積極的に取り組み、幅広い学力や教養、考え方を身に付けて下さい。本や新聞などの活字を読むことも大切です。色々な考えや知識に触れることができるだけでなく、語彙力や思考力、想像力、コミュニケーション能力を向上させることができます。また、課外活動や地域活動などへの参加を通じて、様々な人々との交流も深めて下さい。

大学生活全般を通じて意識してほしいことは、周囲への感謝の気持ちと思いやりの心を持つということです。皆さんが今こうしてスタートラインに立つことができているのは、皆さん一人ひとりの努力もさることながら、周囲の人達の支え、励ましがあったからこそです。家族、友人、学校、地域社会。多くの人達が皆さんの支えとなってくれています。その方々への感謝の気持ちを忘れないようにして下さい。そして、これから日々成長していく過程では、その成長を自分のためだけではなく、周りの人達へも向けることも意識して下さい。


佐賀大学は、皆さんの大学生活を全力でサポートしていきます。各種相談窓口、奨学金等の生活支援、チューター制度といった教育上のサポートなど、様々な取組を通じて教員、職員をはじめ、多くの人達が皆さんを支えていきます。分からないこと、困ったことがあれば、一人で悩まずに相談して下さい。


最後に、私から皆さんへ「志、挑戦、そして未来へ」という言葉を送ります。志とそれを実現するための挑戦と努力こそが皆さんの未来を切り拓いていってくれます。大学生活は長いようで、実際はとても短いものです。人生とは、1日1日の積み重ねでできています。今日という1日を大切にするからこそ、明日という未来が生まれてくる。過去にとらわれたり、ぼんやりと未来を想像するのではなく、毎日を大切に過ごして下さい。

皆さんが胸に抱いている期待と希望とやる気を忘れることなく、心身ともに健康で充実した大学生活を送り、大きく成長していくことを祈念し、入学式の告辞とします。



令和6年4月2日
               国立大学法人佐賀大学長   兒玉 浩明

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