平成17年度鹿児島大学大学院連合農学研究科学位記授与式祝辞
博士の学位記を授与された皆さん、おめでとうございます。
また、ご倍席の指導された先生方、支援されてきたみなさん、お疲れ様でした。
この学位記授与式に参列されている、全ての皆さんの努力に敬意を表するとともに、感謝申し上げます。ありがとうございました。
さて、博士の学位を取得した皆さんに社会は大きな期待を架けています。
バイオテクノロジー、ナノテクノロジー・材料、情報通信など、20世紀の後半4半世紀に飛躍的に進展した先端的科学技術の開発は21世紀においても発展を続け、その蓄積を基に異分野の融合による新しい科学技術を展開しています。これらの新技術は、経済の世界化のもとで、創出する知的財産と人材の流動をめぐり、開発の国際的大競争の状況を呈しています。皆さんは、それぞれの国の政策に従って、これらの開発競争の先陣を努める役割を期待されています。
一方、最近、科学論文の捏造、盗作など、科学者のモラル、倫理が話題となっています。国家プロジェクトの激しい開発競争によるものと推測されます。情報化時代の今日、一つの捏造論文の影響は世界的規模で広がり、多くの研究者、国家プロジェクトに莫大な被害を与えます。もともと、研究とは自らの探究心に基づくものであり、自らを自由に解放して行う作業です。研究に行き詰まったとき、この研究の原点に戻ってください。
また、21世紀は、人口増加、食糧不足、資源・エネルギー開発、環境破壊など多くの問題を抱えています。これらの問題は極めて学際的であり、且つ世界的な広がりを示しており、国際的協調なくしては解決しません。この面で、皆さんは様々な国の研究者、様々な分野の研究者と共同研究に取り組むことを期待されています。課題は、科学技術に限らず政治、経済、社会活動等の全ての分野に及んでいるからです。国際的共同研究は科学者の社会的責務の一つとお考えください。人類が自ら産み出した諸問題を解決せずに21世紀の未来はありません。
皆さんは、国際的協調を図りながら科学技術の国際的な大競争に取り組むという難しい対応に直面するでしょう。科学技術の適用にあたって、それがもたらす利益とリスクを広い立場から判断しながら新しい学術的仕組み、システムを検討する必要があります。さらに社会制度や経済の仕組み、生活様式、自然環境・人類の生存に与える影響などを広く考察することが必要です。世界の動き、社会の動向について客観性と普遍性を追求する科学の論理を貫いてください。
皆さんが世界で活躍されることを、皆さんの前途を祝して、お祝いの言葉といたします。
2006年3月17日
佐賀大学長 長谷川 照