平成30年度佐賀大学9月期学位授与式式辞
ただいま、学士、修士及び博士の学位を授与された皆さん、佐賀大学を代表して心からお祝いを申し上げます。特に留学生の皆さんは、母国を遠く離れ、言葉や習慣の異なる困難な環境の中でも真摯に勉学に励み、見事学位を取得されたことに深く敬意を表します。
また、これまで皆さんを多方面で支えてこられたご家族の皆様にも、心からお祝いとお礼を申し上げたいと思います。
本日、本学を卒業・修了する皆さんは、就職や進学などそれぞれ新たな一歩を踏み出すことになります。これからの自分の将来に大きな期待を抱いていると思いますが、同時に多少の不安も感じておられるのではないでしょうか。
皆さんを取り巻く現代社会が、今、大きな転換点を迎えていることは新聞報道等でも耳にしていると思いますが、遠くない将来、IOT、AIの進歩に伴って私たちの仕事が機械に奪われてしまう、安心して働けなくなると危惧されています。近年の急速な技術革新を目の当たりにすれば、それも無理からぬことと思います。第一次産業革命が起こったイギリスでも、解雇を恐れた労働者による機械の破壊行為、いわゆるラッダイト運動が巻き起こりました。
しかし技術革新が社会にもたらすものは、雇用の喪失ではなく新たな形態での雇用の創出、つまり労働の移動なのです。確かに技術革新による「技術的失業」が発生することは避けられませんが、新たな産業、新たな市場が発生することに伴い、新たな雇用が創出されることも間違いないのです。
事実、ラッダイト運動終息後のイギリスでは、安い綿製品の普及により購買層が一般市民にまで広がりをみせ、それまで以上に労働需要が拡大しました。さらに市民向けの販売店の増加、運送業をはじめ関連産業の拡大と、多くの労働力を必要とする社会の到来が誘引され、管理部門など高度な労働力が求められる契機にもなったのです。
そして今、第四次産業革命の実現が間近に迫っていますが、労働移動に対応できる人材が職を失うことはありません。皆さんには本学の専門分野で培った知識に加え、教養教育、副専攻科目、サブスペシャリティ教育等で身につけた汎用性を存分に発揮し、変化する社会に柔軟に対応されることを期待しています。
最後になりますが、皆さんが学んだここ佐賀の地は、150年前に日本の近代化を牽引した偉人を生み出した歴史ある土地です。その地で学んだ経験に誇りを持ち、幕末から明治維新期という混迷を極めた時代を駆け抜けた先人たちにならい、一人一人の未来を切り開くべく生涯にわたって見識を深め、個性を磨き、自らを高める努力を継続されることを祈念して、式辞といたします。
本日は誠におめでとうございます。
平成30年9月25日 国立大学法人佐賀大学長 宮﨑 耕治