抗ストレス効果のある物質N―アセチルチロシンを 初めて食品(大豆酢)中で発見
【研究者】
代表者:早川 洋一
【研究成果の概要】
現代はストレス社会と言われています。様々なストレスが身体に害を与えることがわかってきていますが、最近、私達は昆虫の抗ストレス機能を増強する因子としてN-アセチルチロシンを発見しました。
N-アセチルチロシンは、ストレス環境下で特に盛んに作られています。 N-アセチルチロシンには、細胞に損傷を与える過剰な活性酸素種等を除去する生理機能があり、細胞レベルで抗ストレス耐性を上昇させ、結果的に個体レベルでも致死的ストレス環境下での死亡率を低下させることを発見しました。また、ヒトを含む哺乳類にも存在し、昆虫と同様の生理機能を担っていることも突き止めました。
こうした一連の研究の多くは、高温のストレス条件(熱ストレス)を用いて解析したことから、N-アセチルチロシンの熱中症予防効果の可能性が示唆されました。さらに、近年、抗ストレス作用を誘導する生体反応が、抗老化機能を担っていることが明らかになってきていることから、N-アセチルチロシンにはアンチエイジング効果があることも期待できます。
研究代表者は、N-アセチルチロシンが食品から簡単に摂取できれば、抗ストレス効果(ストレスにより発生する活性酸素の除去)やアンチエイジング効果を容易に得ることができると考え、様々な食品・食材の化学分析を進めてきました。
今回、佐賀県で180年に渡り醸造酢を製造している老舗の有限会社サガ・ビネガー社との共同研究で、大豆酢中にN-アセチルチロシンが含まれることを発見しました。これは、食品における初めての存在の証明となります。
【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
1)Matsumura, T., Uryu, O., Matsuhisa, F., Tajiri, K., Matsumoto, H., Hayakawa, Y., 2020,
N-acetyl-L-tyrosine is an intrinsic triggering factor of mitohormesis in stressed animals.
EMBO Reports, 21, e49211
2)早川洋一 2020, 『ヒトへの抗ストレス効果も期待できるN-アセチルチロシン』
食品と開発, Vol. 55, No. 6
【今後の展開】
今後、大豆酢のようなN-アセチルチロシン含有食品の動物実験を進めることによって、全く新しい機能性因子としてのN-アセチルチロシンの有用性がより明確になり、抗ストレス効果のある加工食品の開発が期待できます。
【その他PRしたい特記事項】
上記論文1)の解説記事: Fischer, F., Ristow, M., 2020, Endogenous metabolites promote stress resistance through induction of mitohormesis. EMBO Reports, 21, e50340
【教員活動DBのリンク先】
http://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.fd2bd757141e1d0b59c123490551be02.html
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学農学部 生物資源科学科生物科学コース
教授 早川 洋一
TEL:0952-28-8747
E-mail:hayakayo(at) cc.saga-u.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい。