健常成人における靱帯と腱の相互作用の証明に成功
【研究者】
医学部生体構造機能学講座 解剖学・人類学分野
客員研究員 吉塚久記・中尾優太朗 / 教授 倉岡晃夫
【研究成果の概要】
我々は、解剖体を対象としたこれまでの研究から、足部の姿勢制御機構に関わる新たな学説「踵腓靱帯(CFL)のテンショナー機能」を提唱しています。この説は、緊張したCFLが腓骨筋腱をリフトアップすることで、腓骨筋の張力伝達がより効率的に行われ、不整地歩行時の姿勢制御や足関節捻挫の予防に寄与する可能性を示しています。
今回の研究では、生体におけるリフトアップ現象を実証する目的で、超音波診断装置を用いて健常成人13名(26肢)を対象に検討を行いました。その結果、CFLが緊張する20度内がえし位において、腓骨筋腱と踵骨上の基準点との距離は有意に増加し(P < 0.001)、腓骨筋腱の横断面には様々なレベルの形状変化が認められました(下図参照)。特に注目すべき点は、すべての被験者でリフトアップ現象が一貫して観察されたことであり、この現象が生体における普遍的なメカニズムであることを強く示唆しています。
【研究成果の公表媒体】
Scientific Reports(available online 16 July 2025)
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-025-11004-y
【今後の展開】
従来、関節の安定化や運動制御に関与する靱帯と、筋の張力を骨に伝えることで関節運動を担う腱は機能的に独立したものと考えられてきました。「CFLのテンショナー機能」はその常識を覆す学説であり、捻挫の後遺症として問題となっている慢性足関節不安定症(CAI)などの病態理解、重度の足関節捻挫に対する外科的治療法の改善、腓骨筋トレーニング方法の最適化、あるいは足関節靱帯損傷に対するテーラーメード予防法の開発など幅広い分野への展開が期待されます。
本研究はJSPS科研費JP24K14324,JP24K20488 の助成を受けたものです。
【researchmapのリンク先】
https://researchmap.jp/read0043274
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学医学部生体構造機能学講座 解剖学・人類学分野 倉岡晃夫
Tel:0952-34-2220
E-mail:kura@cc.saga-u.ac.jp