陶磁器の自硬成形技術を発明 ~ ㈱香蘭社と共同開発‼ どんな形でも生産が可能に ~
【研究者】
代表者: 肥前セラミック研究センター 一ノ瀬弘道 特任教授
共同研究者: 理工学部 矢田光徳 教授(肥前セラミック研究センター長)
㈱香蘭社 竹下昌章 取締役、中田明香 主任、坂本蓮 研究員
【研究成果の概要】
従来の陶磁器成形の問題をすべて解消した画期的な新しい自硬成形技術を発明しました。従来の鋳込み成形のような石こう型の吸水に頼ることなく、2種類の無機物質の少量添加と温度制御で、あらゆる形を型内で自己硬化させることに成功したのです。
陶磁器の生産で多用される鋳込み成形は、まず、原料と水などを混合した粘土スラリーを作り、石こう型に流し込んで固化させる方法です。多品種少量生産に適しており、世界で利用されています。しかし、型に水を吸わせて型面上に固化させる原理のため、適用できる厚みに限界があり、肉厚品、極薄極小品、複雑な形状品は成形できません。一部のセラミックス製造では自硬性樹脂を混合して型に注入固化させる方法がありますが、樹脂の焼飛ばし不良、高コスト等の問題があり利用できませんでした。つまり、プラスチックスや金属等のように自由な形を生産できなかったのです。
新しい技術は、イオンを放出する物質と吸着する無機物質を粘土スラリーへ少量混合し、型に流し込んで温度を少し上昇させるだけで短時間にそのまま固化させることができます。しかも、その焼成品の見た目や強度は従来のものと同じなのです。さらに、型の材質にはいろいろな材料が使え、摩耗しやすく重い石こう型を使う必要がないのです。
この技術は、従来の鋳込み成形では難しかった形状の陶磁器製品の生産を可能にしました。陶磁器製造工程のひとつの大きな壁(限界)を崩したのです。
【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
・工業所有権(特許): 佐賀大学と㈱香蘭社の共同特許として出願済み
・学会発表: 令和2年11月14日(土)
日本セラミックス協会九州支部秋季研究発表会で発表予定
・論文発表: 学会誌へ投稿中(来年掲載予定)
【今後の展開】
・実用化の見通し
共同研究発明者である有田町の㈱香蘭社で、碍子、大型陶磁器、超複雑デザイン陶磁器、ファインセラミックス等への実用化を目指している。
・応用研究
陶磁器だけでなくファインセラミックスへの応用研究を推進中である。
また、現在研究中の完全無収縮陶磁器の研究、及び有田焼が得意とするデジタルデザイン技術(3Dプリンター技術など)との融合により、これまでにないさらに高精度の陶磁器製品の製造技術について研究を進め、新しい陶磁器市場獲得を目指している。
【デモンストレーション試作品】 (㈱香蘭社提供)
一発で成形した手の形(焼成品)
(中が詰まった複雑形状品)
玉がいし(電線絶縁用)
(従来の鋳込み成形では困難な肉厚品)
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学 肥前セラミック研究センター
特任教授 一ノ瀬弘道
〒844-0013 佐賀県西松浦郡有田町大野乙2441-1(有田キャンパス)
Tel.:0955-29-8888(代表)0955-29-8719(直通)
E-mail:ichi(at) cc.saga-u.ac.jp
※ (at) は @ に置き換えて下さい。