このたび、佐賀大学地域学歴史文化研究センターでは、中野紹太郎編『蓮池藩先賢詩文集』（1922年成立、写本、個人蔵）を翻刻刊行しました。

　佐賀藩の三支藩の一つである蓮池藩は、寛永16年（1639）に成立しました。歴代の藩主たちは学問と教育を重視し、天明4年（1784）には藩校成章館が創設されました。藩校の発足に伴い、次第に充実していた蓮池藩の文事は、第8代藩主・鍋島直與（なべしま なおとも、1798～1864）の時に、いよいよ隆盛を極めました。

　これまで、蓮池藩に関する研究の基本的な文献となっていたのは、『蓮池藩日誌』（ふるさと社、1981年）ですが、これは請役所日記に依拠しているため、藩主の事蹟や藩の動向を知る上ではきわめて有効であるものの、藩主や藩士らの文事については詳しく記されていません。

　『蓮池藩先賢詩文集』の翻刻刊行により、名君と称された鍋島直與や歴代の成章館教授をはじめ蓮池藩士たちの文事について知ることができます。

　写本の形でしか残っていない、蓮池藩の文事を知る手がかりとなる貴重な詩文が、活字化された意義は大きいです。今後この資料集をもとに、蓮池藩の文事に関する研究が進展することが期待されます。

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