海洋エネルギー研究センターが、「ナウル共和国における海洋温度差発電等の導入に関するPre-FS(プレ・フィジビリティースタディ)」プロジェクトに採択

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【概要】

 佐賀大学海洋エネルギー研究センターは、一般社団法人 海外環境協力センター(OECC)とともに、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)の技術メカニズムを担うCTCN(気候技術センター・ネットワーク)の事業として、実施機関であるUNIDO(国際連合工業開発機関)による「ナウル共和国における海洋温度差発電等の導入に関するPre-FS(プレ・フィジビリティースタディ)」プロジェクトに採択されました。CTCNのプロジェクトへの採択は、日本の再生可能エネルギー技術(グリーンガス案件以外※1)としては初となります。

 なお、CTCNには日本政府から約460万米ドルが拠出されています。

 ナウル共和国は、海洋温度差発電等の導入により、2050年までに再生可能エネルギー比率100%を目指しています。

 

 佐賀大学海洋エネルギー研究センターは、一般社団法人 海外環境協力センターとともに、CTCN(気候技術センター・ネットワーク)が令和2年度に国際公募した「ナウル共和国における海洋温度差発電等の導入に関するPre-FS(プレ・フィジビリティースタディ)」のプロジェクトに採択されました。CTCNプロジェクトへの採択は、日本の再生可能エネルギー技術(グリーンガス案件以外※1)としては初となります。 ナウル政府は、2050年までに海洋温度差発電等を導入し、再生可能エネルギー比率100%を目指しています。5月には、ナウル政府、CTCN、OECC、佐賀大学海洋エネルギー研究センター等によるオンライン会議が開催され、GCF(緑の気候基金:Green Climate Fund)の支援による海洋温度差発電等の社会実装を目指すことが合意されました。今年5月からは東京大学東京大学大学院 新領域創成科学研究科もプロジェクトに参画し、ナウル共和国における海洋温度差発電等のポテンシャル解析・評価を実施中です。

(参照1:https://www.ctc-n.org/news/ctcnunido-call-proposals-ocean-energy-technical-pre-feasibility-study-nauru

(※1:ラオスにおけるグリーンガスの案件: https://www.ctc-n.org/news/ctcnunido-call-proposals-developing-power-gas-masterplan-lao-pdr )

 

 

ナウル共和国

 太平洋南西部に位置する島嶼国で、人口は約1万3000人。 かつては、リン鉱石の輸出によって栄えた。1980年代には、東京電力による海洋温度差発電の実証研究が実施されたが、当時の技術では、商用化には至らなかった。現在、ナウル共和国の電力供給は、ほぼ100%ディーゼル発電によるものである。太陽光発電等の導入も進んでいるが、変動性再エネであること、島嶼国であり設置場所が限られていることなどの理由により、再び海洋温度差発電に期待が集まっている。

(参照2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nauru/data.html

 

CTCN

 気候変動に係る技術移転を促進するための実施機関として、COP16(2010年)にて設立が決定され、2013年よりサービスの提供を開始している。開発途上国からの要望に基づき、各国のニーズに沿った支援を行う組織である。主に先進国及び地球環境ファシリティ(GEF)より、約5,100万米ドルが拠出されており、そのうち日本政府からは11,973,480米ドル(20132019年度)が拠出されている。

(参照3:https://www.ctc-n.org/about-ctcn/donors

 

GCF

 開発途上国がGHG排出抑制・削減・吸収(緩和)と気候変動による影響への対処(適応)を実施するための努力を支援する国際基金(ファンド)。開発途上国における開発を低排出で、かつ気候変動に強靭なものとするために「パラダイムシフト」を引き起こすことを目指す支援を提供している。先進国及び開発途上国(計43か国)からGCFへの拠出表明総額が約103億米ドル、日本は15億米ドル(約1,540億円)を拠出している。

(参照4:http://www.env.go.jp/earth/ondanka/gcf.html

 

 

 日本の海洋温度差発電技術が、国際入札で本プロジェクトに採択されたのは、約50年以上にわたる下記のような国内および海外での研究開発の実績が評価されたものである。

① 平成13年度の総合科学技術会議において4重点分野の中の『環境』で「海洋エネルギー利用技術の研究開発」が挙げられた。この分野で佐賀大は中核研究拠点として位置づけられ、本格的な社会実装への貢献を目指した学術研究が開始された。当時、導入された研究設備は、世界最高水準の研究設備として評価(参照:『再生可能エネルギー白書』)されるなど、新しい発電用熱サイクルや高性能熱交換器の開発で研究成果を得た。
(参照5:https://www.ioes.saga-u.ac.jp/jp/

② 平成25年に、沖縄県事業にて設置した久米島における海洋温度差発電実証試験設備が、世界的な第2期研究開発期の中で世界に先駆けて発電に成功し、国際的にも注目された(これまで67ヶ国、1万人以上が視察)。同設備は、日本の海洋エネルギーの中で初めて系統連系(沖縄電力)された。また、本設備を用いた本格的実証研究が、平成26年度より国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構.(NEDO)の支援を得て、民間企業とともに実施され、新しい研究成果とともに社会実装の可能性を示した。

③ 沖縄県久米島において海洋温度差発電を核とする海洋深層水の複合利用は、「KUMEJIMA MODEL(久米島モデル)」としてSDGs達成(⑥、⑦、⑧、⑨、⑪、⑬、⑭など)のための有効な社会モデルの一つとして国内および国際的に注目されている。

④ 佐賀大学は、国立研究開発法人科学技術振興機構(略称JST)と独立行政法人国際協力機構(略称 JICA)の平成28年度『地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム』(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development、略称SATREPS)に採択され、同プログラムの支援を得て、マレーシアにおける新しい海洋温度差発電(H-OTEC)の社会実装の推進と若手研究者の人材育成を実施している。本事業では、マレーシアにおける再生可能エネルギー推進のために海洋温度差発電の社会実装への貢献とともに、「KUMEJIMA MODEL」の成果を活かした「MALAYSIA MODEL」の構築に向けて実施している。令和3年度中に、日本で製作した海洋温度差発電の研究設備を マレーシアに輸出する予定である。
(参照6:https://www.jst.go.jp/global/kadai/h3003_malaysia.html

 

 

  

1980年代 ナウル共和国で実施された海洋温度差発電の実証の様子(左:全体、右 取水管)

 

 

【本件に関するお問い合わせ先】

  国立大学法人 佐賀大学 海洋エネルギー研究センター (担当 池上)

  Tel:0952-20-4744   Fax:0952-20-4745  

  E-mail: ikegami_secretary (at) ioes.saga-u.ac.jp

 

  一般社団法人 海外環境協力センター (担当 小河原)

  E-mail: ogahara (at) oecc.or.jp

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