理工学部とシンクロトロン光応用研究センターの共同研究グループによる高エネルギー変換効率の期待される中間バンド型太陽電池の 二段階光吸収電流の増加に成功

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【概要】

 佐賀大学理工学部電気電子工学部門 田中 徹 教授とシンクロトロン光応用研究センター 郭 其新 教授,齊藤 勝彦 助教らと香港城市大学との国際共同研究グループは,マルチバンドギャップ半導体を用いた中間バンド型太陽電池において,効率向上の鍵である二段階光吸収電流の増加に成功しました。脱炭素社会実現に向けた次世代太陽電池の基礎技術として期待されます。

 

【本文】

 電気電子工学部門 田中 徹 教授とシンクロトロン光応用研究センター 郭 其新 教授,齊藤 勝彦 助教らと香港城市大学らの国際共同研究グループは,マルチバンドギャップ半導体を用いた中間バンド型太陽電池において,効率向上の鍵である二段階光吸収電流の増加に成功しました。

 中間バンド型太陽電池は,従来の半導体のバンドギャップ内に新たなバンドを有する材料を用いる太陽電池であり,この中間バンドを介した光吸収が太陽光の幅広いスペクトルを吸収できることから,理論値で63.8%の高いエネルギー変換効率が期待されています。この中間バンドを実現する方法として,量子ドット超格子を用いる手法が広く研究されていますが,本学の研究グループでは材料本来の性質として中間バンドを有するユニークな材料であるマルチバンドギャップ半導体を用いた研究を進めてきており,2012年に本材料を用いた中間バンド型太陽電池の発電原理を世界で初めて実証してきました。

 効率向上のためには中間バンドを介した二段階光吸収の増加が重要な課題でしたが,従来の材料では熱平衡下で中間バンド内に電子がほとんど存在しないため,光吸収の割合が小さく改善が必要となっていました。本研究では,ドナーとして作用する不純物を添加した結晶成長を行うことにより中間バンド内の電子濃度を増加させた結果,二段階光吸収電流の増加にみごと成功しました。

 今回の研究成果は,本材料を用いた中間バンド型太陽電池の効率向上のための重要な要素技術であり,脱炭素社会実現に向けた次世代太陽電池の開発に貢献できると考えています。

 本研究成果をまとめた論文は,Elsevier社が発行する学術専門誌Solar Energy Materials & Solar Cellsに掲載されました。

 

〇論文情報:

著者:Tooru Tanaka, Shuji Tsutsumi, Katsuhiko Saito, Qixin Guo, and Kin Man Yu

 タイトル:Improved two-step photon absorption current by Cl-doping in ZnTeO-based Intermediate Band Solar Cells with n-ZnS layer

 雑誌名:Solar Energy Materials & Solar Cells  Vol. 235, pp. 111456-1~5 (2021)

 

 

語句説明:

・中間バンド型太陽電池

 次世代太陽電池の候補として研究が進められている太陽電池の一つであり,従来の半導体のバンドギャップ内に新たなバンドを有する材料を用いることにより,従来は吸収されず透過していた波長の光も吸収できることから,高いエネルギー変換効率の達成が期待されている。

 

・二段階光吸収電流

 バンドギャップ内に形成されたバンド(中間バンド)の存在により,光のエネルギーを吸収することで,半導体内の電子が①価電子帯から中間バンド,②中間バンドから伝導帯,の順に二段階で励起され,自由電子が電流として外部回路に取り出される。このようにして生じる電流を二段階光吸収電流と呼び,中間バンド型太陽電池の動作において最も重要な電流である。

 

・ドナー

 半導体に添加する不純物のうち,電子を母材半導体に与える役割を有するもの。

 

 

 

【本件に関する問い合わせ先】

  佐賀大学理工学部総務

  電話 0952-28-8513

 

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