土木学会西部支部技術賞の受賞

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【受賞者】
 伊藤 幸広 (佐賀大学理工学部)
 渡邉 泰幸 (西松建設㈱)

【受賞した賞の名称】
 令和3年度土木学会西部支部技術賞

【授与機関】
 公益社団法人土木学会西部支部

【受賞した日】
 令和4年5月23日

【受賞した研究の題目】
 斜張橋斜材の多機能型点検装置の開発

【受賞につながった研究内容】
 斜張橋は、経済性、合理性やその形状の美しさから人道橋から長大橋まで数多くの橋梁に採用され、道路橋だけでも約310橋が架橋されています。斜張橋は吊橋と並び道路ネットワークを形成する重要なインフラ構造物として位置づけられており、その保全を怠れば道路ネットワークの分断に繋がり時間的、経済的損失が膨大なものとなります。斜張橋の維持管理を行う上で重要なポイントは、斜材の点検・保全であり、斜ケーブル(PC鋼材)の腐食が進行すると落橋の危険性が生じます。斜材は、保護管、定着部、斜ケーブル、制振装置および充填材で構成されており、これらの点検に関しては、斜材が高所に位置する部分が多い等の理由から、合理的な点検技術の開発が進んでいません。例えば、斜材の保護管の点検では、ロープアクセスや高所作業車を用いた目視点検が実施されていますが、これらの点検方法では、作業時間がかかること、点検員の落下の危険性および目視による点検精度の問題があります。
 そこで斜材点検の課題を解決するため、斜張橋斜材を自動で昇降し保護管の全周・全延長および定着部をカメラで撮影できる点検ロボットおよび保護管の損傷を自動で抽出し計測する自動損傷検出ソフトを開発しました。さらに、合理的な点検方法が確立されていない斜ケーブルの腐食環境の評価や張力測定においても、電気容量式水分計を用いた水分測定ユニットの開発および点検ロボットに加速度計を搭載することにより新たな張力測定法を提案しました。すなわち、斜材点検において重要な複数の点検項目を1つの装置で効率的にかつ高精度で点検できる多機能型点検装置を開発しました。
 多機能型点検装置は、これまでに5橋の実橋での点検実績(7件)があり、ロープアクセスや高所作業車による従来の点検方法と比較し、多機能型点検装置による保護管の損傷の点検精度は高く、点検作業時の安全性に優れていることを確認しています。また、水分測定および張力測定の実橋での適用性は高く、張力測定では従来法と同等の結果を得られることを検証しています。
 本装置は、斜張橋の維持管理業務のコスト削減や点検精度の高さ等から、斜張橋の安全確保および長寿命化に寄与し、道路ネットワークの保全に繋がることから、社会的貢献度が高いものと考えられます。以上の点が評価され土木学会西部支部技術賞を受賞しました。

【その他PRしたい特記事項】
 本件は、産学連携で共同開発したロボットの実用化事例です。今回受賞した技術については本学と西松建設㈱との共願で、点検装置(特許第5717246号)、斜張橋のケーブルの検査装置(特許第6836751号)、測定装置および測定システム(特許第7057563号)の3つの特許を取得しています。また、本学及び西松建設㈱との間で実施契約を締結しています。

【教員活動DBのリンク先】
 https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.40dfb849147da695.html

 

                 
                        理工学部・伊藤教授(左)

【本件に関する問い合わせ先】
 佐賀大学理工学部 伊藤 幸広
 E-mail:itoy@cc.saga-u.ac.jp

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