ノリの色落ちを招く有明海珪藻赤潮の年間動態と赤潮原因種を特定

【研究者】
 代表者:佐賀大学農学部准教授 木村圭
 分担者や協力者:佐賀大学農学部助教 吉田和広
         佐賀県有明水産振興センター技師 太田洋志
         佐賀県有明水産振興センター技師 岩永卓也
         佐賀県有明水産振興センター技師 吉武愛子
         佐賀県有明水産振興センター係長 三根崇幸
         佐賀大学農学部(2021年卒業) 大村優奈

【研究成果の概要】
有明海で深刻な赤潮を形成する珪藻スケレトネマ属は、夏季及び冬季に大増殖し、夏季有明海底層の貧酸素化による有明海特産二枚貝の大量斃死や冬季養殖ノリの色落ちを引き起こします。しかし、スケレトネマ属は、顕微鏡による種分類が困難であるため、赤潮種の特定がこれまでできていませんでした。しかし、スケレトネマをふくむ珪藻は、細胞の大きさや光合成が種によって異なるため、赤潮種の特定が赤潮理解には不可欠です。そこで、遺伝子配列に基づいてスケレトネマを種別に定量できるスケレトネマ種判別定量PCR法を確立し、有明海の海水中を2週間おきに採取し、スケレトネマ7種の年間動態を明らかにしました。その結果、スケレトネマ7種のうち、3種が夏期に増殖する一方、4種が冬季に増殖することが初めて判明しました。また、その増殖パターンも異なり、急激に赤潮化したのちにすぐに消滅するタイプと中規模で海水中に長く居座るタイプの2種類があることも初めて明らかとなりました。
今回開発した新規定量法(定量PCR法)で、有明海赤潮種スケレトネマが種ごとに異なる季節性や出現パターンを持つことが明らかとなりました。
また、ノリ漁期に出現したスケレトネマ種は特にS. dohrniiS. japonicumの2種であったことも判明しました。

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
掲載雑誌名:Marine Ecology Progress Series
発表論文題:Species-specific monitoring of Skeletonema blooms in the coastal waters of Ariake Sound, Japan
著者:吉田和広1、太田洋志2、岩永卓也、吉武愛子、三根崇幸、大村優奈、木村圭
1佐賀大学農学部、佐賀県有明水産振興センター)
DOI: https://doi.org/10.3354/meps14200

【今後の展開】
有明海の珪藻赤潮は、有明海特産の二枚貝の大量斃死や佐賀の養殖ノリの色落ちによる品質を低下させる最大の原因であり、長らく問題視されてきました。本研究では、世界でも初めてスケレトネマ種別動態を解明し、赤潮の発生時期や増殖パターンが明らかとなりました。今後は、二枚貝やノリ養殖に打撃を与える重要な赤潮種の培養実験や海洋観測を通して、その光合成や増殖特性を詳細に調べ、赤潮発生予測や防除の研究につながり、佐賀の二枚貝やノリ養殖産業の振興や地元産業への貢献が期待されます。

【その他PRしたい特記事項】
本研究は、「ハブ型ネットワークによる有明海地域共同観測プロジェクト(COMPAS)」と「地域の農水圏生物生産・利用技術等の高度化」の研究の一環として行われました。

【教員活動DBのリンク先】
木村圭:https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.66dc9d20979d5449.html
吉田和広:https://research.dl.saga-u.ac.jp/profile/ja.ed1882ec7074c3c5.html

 

【本件に関する問い合わせ先】
 佐賀大学農学部准教授 木村圭
 Tel:0952-28-8496
 E-mail:kimurak@cc.saga-u.ac.jp

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