イオン液体中に存在する亜鉛イオンの構造を決定

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【研究者】
 筆頭著者(本件に関する問合せ先):真瀬田 幹生
 共同研究者:高椋 利幸

 

【研究成果の概要】
 本学総合分析実験センターの技術職員である真瀬田幹生は、理工学部教授の高椋利幸とともに、新型電池の開発につながる可能性のある研究を行いました。
 この研究では、特別な性質を持つ液体であるイオン液体C2mimTFSAと、アセトニトリルという化学物質を混合した溶液の中で、どのように亜鉛(亜鉛イオン)が振る舞うかを調査しました。その結果、イオン液体と亜鉛が混ざると、亜鉛はイオン液体の一部分(TFSAという部分)と強く結びつきました。具体的には、1つの亜鉛に対して、3つのTFSAが結びつきました。しかし、アセトニトリルを混ぜると、亜鉛はTFSAから離れて、アセトニトリルに結びつくようになりました。最終的に、1つの亜鉛は6つのアセトニトリルに囲まれる形になりました。
 この研究で明らかにした亜鉛の挙動は、電池の開発に応用できます。ひいては、この研究結果は、新型電池の開発に繋がるかもしれません。イオン液体は、安全性が高く、毒性が少ないことから、電池の中心部分としての使用が試みられています。イオン液体を活用した電池を開発することにより、リチウムイオン電池を上回るような大容量電池の開発が期待されていますが、本研究は、この開発に貢献するものです。
 この研究成果は、オランダの科学雑誌「Journal of Molecular Liquids」のオンライン版(6月3日付け)に掲載されました。

 

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
 雑誌名
 Journal of Molecular Liquids (エルゼビア社)(2023年6月3日オンライン掲載)

 論文タイトル
 Complex formation of Zinc(II) ion with acetonitrile in ionic liquid [C2mim][TFSA] studied by 15N NMR spectroscopy and DFT
 calculation

 著者
 Mikio Maseda1, Toshiyuki Takamuku2,
 
真瀬田幹生1, 高椋利幸2,

 1.佐賀大学総合分析実験センター
 2.佐賀大学理工学部

 

 論文DOI:10.1016/j.molliq.2023.122252

 

【今後の展開】
 今後はイオン液体に混合する化学物質をアセトニトリルから他の化学物質に変更して亜鉛の挙動を調べ、本研究で得られた成果と比較をします。様々な化学物質との比較を行うことで、より優れた新型電池素材の開発に繋がると期待されます。

 

【その他PRしたい特記事項】
 本研究は、総合分析実験センターが学内外に共用化している核磁気共鳴装置を、その管理者である技術職員が利用して得た成果です。総合分析実験センターでは研究相談も受け付けています。これまで核磁気共鳴装置を利用したことがない学内外の研究者の方もお気軽にお問い合わせください。

 総合分析実験センターのウェブページ:https://www.iac.saga-u.ac.jp/

 

【用語解説】
[1] イオン液体
 イオン液体は、室温で液体状態を保つ塩の一種です。通常の塩(例えば、食卓塩のようなナトリウム塩)は固体ですが、室温でも液体の形を保ちます。イオン液体は、水、有機溶媒(アルコールなど)と異なる性質を持っており、第三の液体と呼ばれます。また、イオン液体はその性質をデザインすることが比較的容易で、低揮発性、難燃性、電気伝導性、低環境負荷などの特徴を持たせることができるため、工業・医療の分野で応用が期待されています。

 

【本件に関する問い合わせ先】
 総合分析実験センター
 技術員 真瀬田 幹生(ませだ みきお)
 TEL:0952-28-8896

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