理工学部化学部門 海野 雅司 教授、藤澤 知績 准教授らが希土類元素を含む 化合物の構造解析に成功 〜生体医学や画像検査技術に新たな知見を提供〜

【概要】
 理工学部化学部門 海野 雅司 教授と藤澤 知績 准教授らは2022年に理工学部客員研究員として佐賀大学に在籍したTao Wu博士(チェコ科学アカデミー・生物有機化学研究所)らとの共同研究により、希土類元素のユウロピウムを含んだ化合物について、佐賀大学が独自に開発した分子構造解析ツールであるラマン光学活性分光を使った構造解析に成功しました。この研究は、生体医学や画像検査技術への応用が期待される希土類金属化合物の医療および医学研究への応用を可能にする基盤を築くものです。この成果はAdvanced Science誌にて発表されました。

【本文】
 希土類元素は原子番号57のランタンから71のルテチウムまでの15元素を含み、レーザー、蛍光体、強力磁石、排ガス浄化など現代社会の多様な分野で使用されています。特にユウロピウム(Eu、原子番号63)はその発光特性から生体医学や画像検査への応用が期待されていますが、これまでその特性のためラマン分光やラマン光学活性分光による分析法が適用できない問題がありました。
 そこで、佐賀大学が開発したラマン光学活性分光(注1)を使用し、ユウロピウムを含む複数の化合物の分子立体構造を解明することに成功しました。これにより、希土類金属化合物の医療や医学研究への応用を基礎づける情報を提供し、新しい診断技術の開発に繋がることが期待されます。

【論文情報】
著 者    :Tao Wu、 Petr Bouř、 Tomotsumi Fujisawa、 and Masashi Unno
タイトル:Molecular Vibrations in Chiral Europium Complexes Revealed by Near-Infrared Raman Optical Activity
雑誌名    :Advanced Science 2023、 2305521.
DOI       :10.1002/advs.202305521

【用語解説】
(注1) ラマン分光は物質に光を照射したときの散乱光を分析し、原子の振動運動を検出する技術であり、物質の詳細な構造情報を提供できる。また、ラマン光学活性分光では、円偏光を用いて通常は区別できない右手分子と左手分子を判別することができる。

 

【問い合わせ先】
 佐賀大学 理工学部 化学部門 教授 海野 雅司
 TEL:0952-28-8678
 E-mail:unno@cc.saga-u.ac.jp

 佐賀大学 理工学部 化学部門 准教授 藤澤 知績
 TEL:0952-28- 8603
 E-mail:tfuji@cc.saga-u.ac.jp

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