佐賀大学で開発された近赤外ラマン光学活性分光による生体関連分子の構造解析に関する研究成果をまとめた総説を発表 〜太陽光の有効活用や医療研究への応用に新たな知見を提供〜

【概要】
 理工学部化学部門 海野 雅司 教授と藤澤 知績 准教授らは、佐賀大学の独自開発技術である近赤外ラマン光学活性分光による生体関連分子の構造解析に関する研究成果をまとめ、その総説(Perspective)を米国化学会の物理化学誌(The Journal of Physical Chemistry)に発表しました。この研究は、太陽光の有効利用や近年注目されている光受容タンパク質を医療に応用するための研究の基盤となります。

【本文】
 生物は色素分子を活性中心としてもつタンパク質をもち、これらの色素タンパク質は生命現象を司る重要な役割を担っています。その代表例は光エネルギーを利用するための光受容タンパク質で、ヒトの目の網膜上に存在する視物質ロドプシンや光合成系タンパク質などがあります。これら光受容タンパク質の機能は活性中心である色素分子で実現されるため、その構造解析は生命現象の理解という基礎研究だけでなく、太陽光の有効利用や近年注目されている光受容タンパク質を医療に応用する上で鍵を握ります。
 そこで佐賀大学では近赤外光励起のラマン光学活性分光 (注1) を用いた色素分子の構造解析法を開発してきました。この佐賀大学の独自技術が評価され、米国化学会の物理化学誌からの依頼で今までの成果をまとめた総説(Perspective)を発表しました。この成果が太陽光エネルギーを活用する新しい素子の開発や医薬品開発において注目されている光遺伝学ツールなどの開発につながることが期待されます。

【論文情報】
著 者    : Tomotsumi Fujisawa, and Masashi Unno
タイトル: Near-Infrared Excited Raman Optical Activity as a Tool to Uncover Active Sites of Photoreceptor Proteins
雑誌名 : The Journal of Physical Chemistry B 128, 2228-2235 (2024).
DOI   : 10.1021/acs.jpcb.4c00094

【用語解説】
(注1) ラマン分光は物質に光を照射したときの散乱光を分析し、原子の振動運動を検出する技術であり、物質の詳細な構造情報を提供できる。また、ラマン光学活性分光では、円偏光を用いて通常は区別できない右手分子と左手分子を判別することができる。

 

【本件に関する問い合わせ先】
 佐賀大学 理工学部 化学部門 教授 海野 雅司
  TEL:0952-28-8678 e-mail:unno@cc.saga-u.ac.jp
 佐賀大学 理工学部 化学部門 准教授 藤澤 知績
  TEL:0952-28- 8603 e-mail:tfuji@cc.saga-u.ac.jp

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