野生のタケノコの「おいしさ」を地形から読み解く ~ 標高が高い場所ほど、糖度とうま味が高い傾向を発見~

〇 研究成果の概要
小樽商科大学の片山昇教授を中心とする佐賀大学・北海道大学との共同研究グループは、北海道北部の森林に自生するチシマザサのタケノコを対象に、地形条件と味の関係を調べました。味覚センサーと糖度測定の結果、標高が高い場所ほど糖度とうま味が高く、苦味の後味が弱い傾向が明らかになりました。本成果は、良質な山菜が得られる場所を科学的に把握し、山菜資源の持続的に利用するための知見となるものです。なお、味覚センサーによる味評価には、佐賀大学総合分析実験センターの学外利用制度を通じて、同センターが保有する「味認識装置:TS-5000Z」が利用されました。
〇 研究成果のポイント
・チシマザサのタケノコの味を、味覚センサーと糖度測定によって客観的・定量的に評価しました。
・標高が高い場所ほど、糖度とうま味が高く、苦味の後味が弱い傾向が認められました。
・斜面の傾斜も味と関係し、急斜面ほど糖度が高く、苦味の後味が弱い傾向が認められました。
・5 年間継続して収穫した場所と収穫しなかった場所で、味に明確な違いは認められませんでした。
〇 活動の目的・背景
森林は、食料や資材などさまざまな恵みを人々にもたらしています。山菜もその一つで、古くから人々の食文化や暮らしに深く関わってきました。近年では、山菜は地域の食資源としてだけでなく、自然体験や観光資としての価値も注目されています。一方、山菜は農作物とは異なり、栽培・管理されることが少ないため、その生産量や品質は時期や場所によって大きく変化します。そのため、「いつ、どこで、どのような山菜が得られるのかを予測することが難しく、山菜資源を持続的かつ有効に利用するうえでの制約となっています。さらに、これまでの限られた研究では、生産量を左右する要因について検討が進められてきましたが、生育環境によって味がどのように変化するのかという品質面については、十分に分かっていませんでした。そこで研究グループは、北日本の森林に広く生育し、山菜として親しまれているチシマザサのタケノコに着目して、その味と生育環境との関係を調べました。
〇 活動の詳細
本研究は、北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林で実施しました。同研究林では研究グループによって2013年からチシマザサの形態やタケノコの生産量や関する長期調査が行われており、2019年以降は一部の調査区で毎年タケノコを収穫する実験も続けられています。2024年5月に研究林内の41個の調査区からタケノコを採取し、佐賀大学で味覚センサーを用いてうま味や苦味の後味などを測定し、あわせて糖度も測定しました。調査した区画について、地理情報システム(GIS)のデータから標高と斜面の傾斜を調べるとともに、土壌水分も測定し、これらの環境条件や過去の収穫履歴とタケノコの味との関係を解析しました。その結果、2019~2023 年の5 年間にわたって継続的にタケノコを収穫した場所と、収穫していない場所を比較したところ、味に明確な違いは認められませんでした。一方、タケノコの味は調査場所によって大きく異なり、特に標高との間に明瞭な関係がみられました。標高が高い場所ほど、糖度とうま味が高く、苦味の後味が弱い傾向が認められました。また、急斜面ほど糖度が高く、苦味の後味が弱い傾向もみられました。一方、土壌水分と味との間には明確な関係は認められませんでした。これらの結果から、今回調査した地域では、生育場所の地形条件、とくに標高がタケノコの味と密接に関係していることが示されました。標高が高い場所で糖度とうま味が高くなった理由の一つとして、気温の違いが関係している可能性があります。植物は低温環境にさらされると、寒さに適応するために糖やアミノ酸などを蓄積することがあります。糖は甘味に、グルタミン酸などのアミノ酸はうま味に関係することから、高標高の低温環境がタケノコの味に影響している可能性があります。
〇 期待される成果/今後の展望
本研究は、タケノコの味を客観的に測定し、その違いが標高や斜面の傾斜と関係することを示したことで、山菜の資源価値を「量」だけでなく「質」の面から評価する新たな視点を示しました。こうした知見は、良質な山菜が採れる場所を科学的に把握し、山菜資源を持続的に利用するための基礎情報となります。今後は、複数年にわたって同じ傾向がみられるかを調べるとともに、実際の気温や糖・アミノ酸などの成分を測定し、なぜ地形によってタケノコの味が変わるのかを明らかにしていく予定です。こうした研究を進めることで、標高・気温・味の関係を明らかにし、地形情報から良質な山菜が採れる場所を予測するとともに、将来の温暖化によって山菜の味がどのように変化するのかを予測することにもつながると期待されます。
〇 研究成果の公表媒体(論文や学会など)
論文タイトル:Environmental drivers of taste characteristics in wild edible plants: effects of topographic gradients and human harvesting evaluated using dwarf bamboo culms
掲載誌名:PLOS One
公開日:2026年10月28日
DOI: https://doi.org/10.1371/journal.pone.0360962
【本件に関する問い合わせ先】
佐賀大学総合分析実験センター機器分析部門
技術専門職員 龍田 典子 mail: si3264@cc.saga-u.ac.jp


