平成27年度佐賀大学学位記授与式式辞
学士、修士、博士の学位を授与された1647名の皆さん、佐賀大学を代表して心からお祝いを申し上げます
今日のこの日を迎えた皆さんは、入学以来真摯に勉学に励み、様々な障壁を乗り越えて、本日、佐賀大学の学位を授与されました。特に留学生の皆さんは母国を遠く離れ、言葉や習慣など異なる環境の中でよく研鑽され、見事に学位を取得されたことに対し、深く敬意を表します。
このめでたき日を迎えるにあたり、これまで皆さんを物心両面から支えていただきましたご家族の皆様にも、お祝いとお礼を申し上げたいと思います。卒業生、修了生の晴れの姿をご覧になられて、皆様のお喜びもひとしおなのではないでしょうか。また、平素からご支援いただいている佐賀大学同窓会をはじめとする関係者の皆様、そして本日の学位記授与式に至るまで、学生の成長を見守ってくださった全ての皆様にも感謝を申し上げます。
大学の使命は学術の中心として、高い教養と専門能力を培い、深く真理を探求して得られた新たな知見を活かして、社会の発展に寄与することです。特に佐賀県唯一の国立総合大学である本学は、地域との連携を強固にし、地域社会の発展に貢献できる人材の輩出が求められており、COC:Center of Communityとして、「佐賀のための佐賀大学」を実現すべく、教育・研究・社会貢献活動を行っています。本日卒業、修了される皆さんに対しても、この理念のもと、地域社会全体をフィールドとしたアクティブ・ラーニングの拡充や、有識者を招いた実践教育の充実など、地域の知的資源を最大に活用した高等教育を実現すべく、教職員が一丸となって取り組んでまいりました。私ども教職員は、大学や地域の期待に応えて学士力を身につけ学位を取得した皆さんを誇りに思うとともにこれからのスタートにエールを送りたいと思います。
皆さんを取り巻く現代社会は、不確実性の時代という言葉に表されるように、激動の時代、変化し続ける時代と言われています。少子高齢化の進行、グローバル社会の到来、またIOTに代表される情報通信技術の発達、人工頭脳(AI)の進歩など、その変化のスピードは人類未踏の体験であり、それだけに益々学士となった皆さんの叡智を必要とするでしょう。
五年前、未曾有の東日本大震災が起こったように、将来、想定外の危難に遭遇することもあるかも知れません。しかし、歴史を振り返れば、いつも人間の叡智が苦難を乗り越えてきました。皆さんは幕末から明治維新にかけて、この佐賀藩がいち早く西洋文明を取り入れ、日本の産業革命の原動力となった歴史をご存知と思います。そしてこの時期佐賀藩は多くの偉人達を輩出しました。
西洋文明に接し、精錬方という科学技術の研究機関を創設し、反射炉築造や蒸気機関を製作させた藩主鍋島直正、初代司法卿となって日本の司法制度をつくった江藤新平、初代文部卿であり初代東京府知事となった大木喬任、三重津海軍所をつくり、日本赤十字社の礎となった博愛社を創設した佐野常民、総理大臣となり、早稲田大学を創設した大隈重信など佐賀の七賢人としてもよく知られています。七賢人以外でも東大医学部の礎を築いた伊東玄朴や相良治安は近代医学の導入に貢献しました。先週医師国家試験の結果が発表されましたが、本学医学部の皆さんは98.9%と高い合格率で国立大学の中ではトップの成績でした。この医師の免許制度を全国に先駆けて導入したのが佐賀藩でしたのでとても嬉しく思いました。地方の外様藩に過ぎない佐賀藩が明治維新期にこれだけの近代化を行い、日本の産業革命に寄与したということ、そしてその佐賀の地で4年間学んだことを皆さんは是非誇りとしていただきたいと願っています。
本学はこれからも地域における知の拠点として、教職員と在学生一同、力を合わせて地域に求められる大学づくりを進めて参ります。今後は同窓会の一員として、本学並びに後輩たちを温かく見守っていただきたいと思います。そして、この佐賀大学で学んだことに矜恃を持ち、それを糧とし、変化し続ける社会にも柔軟に対応できるよう、生涯にわたって見識を深め、自らを高める努力を継続されることを祈念します。
最後にドイツ生まれのアメリカ人詩人サミュエル・ウルマンの青春という詩から引用して私からのはなむけの学位授与の式辞とさせていただきます。そのYouthという詩は連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥が座右の銘としたことで知られるようになりました。
Youth is not a time, it is a state of mindで始まり、You are as young as self-confidence, as old as your fear, as young as your hope, as old as your despairと続きます。
どうか、失敗にくじけることなく、自信と希望を失わないよう社会生活を送って下さい。本日は、誠におめでとうございます。
平成28年3月23日
国立大学法人佐賀大学長 宮﨑 耕治