平成31年度国立大学法人佐賀大学入学式告辞
本日、入学式を迎えた1,686名の新入生の皆さん、そして、本学で学ぶため海外から留学してきた交換留学生の皆さん、入学おめでとうございます。佐賀大学を代表し、心から歓迎いたします。
ご臨席頂きましたご家族の皆様は、万感の思いで本日を迎えられたことと存じます。これまで心身両面で新入生を支えてこられた皆様に敬意を表するとともに、無事に今日の日を迎えられましたことをお慶び申し上げます。
併せて、平素より本学を篤くご支援頂いている佐賀大学同窓会の川副会長をはじめ、ご多忙の中にもかかわらず足を運んでくださった山口佐賀県知事及びご来賓、関係者の皆様にも、心より御礼を申し上げます。
佐賀大学は明治17年に創設された佐賀師範学校を母体とし、旧制佐賀高校及び佐賀青年師範学校との統合によって昭和24年に設立された歴史ある大学です。平成15年の佐賀医科大学との統合、さらに平成28年の有田窯業大学校との統合を経て、現在の教育、芸術地域デザイン、経済、医、理工、農の6学部体制となり、佐賀県唯一の国立総合大学として教育・研究・社会貢献活動を展開しています。
県内に本庄、鍋島、有田の3キャンパスを配置し、美術館、附属病院、附属学校、さらに資源循環型エネルギーやシンクロトロン光、ニューセラミック等の専門分野を研究するセンターを設置するなど、地域社会の要請に応え、地域に根差し、地域に必要とされる大学づくりを進めてまいりました。
本日入学する皆さんには、是非この環境を皆さん自身が肌で感じ取り、総合大学の利点を最大限に活かして、社会の一員となる将来を見据え、研鑽を積んでほしいと思います。
皆さんを取り巻く現代社会は「不確実性の時代」という言葉に象徴されるように、激動の時代、変化し続ける時代と言われています。IoTに代表される情報通信技術の発達、AIの進歩は、私たちが経験したことのない速さを伴い、実生活のあらゆるシーンに応用され始めました。私たちが子供のころに夢見た未来の世界が現実のものとなり、この先も想像を超えるような技術革新がなされ、人々の暮らしも一変していくことでしょう。
皆さんにはこれから始まる大学生活の中で、専門性の異なる友人と交流を深め、多様性を涵養しながら自由な発想で勉学に励み、変化する社会への対応力を身につけることを期待しています。
さて、皆さんは「最も強い種、あるいは最も賢い種が生き残るのではない。変化に最も適応する種が生き残るのだ」という進化論の引用を耳にしたことがあるでしょうか。社会の変化に対応する姿勢を求めたものと言えますが、現代社会に生きる我々へのメッセージとして捉えるならば、そのサイクルに注視する必要があります。
加速度的に変化する社会においては、一度の適応でその後の人生が安泰になるということは全くなく、次の変化を鋭敏に感じ取り行動し続けること、そのサイクルを繰り返すことが重要となるでしょう。そのことを、是非心に留め置いてほしいと思います。
そして変化への適応は、常に覚悟と労力を必要とし、時に苦痛を伴います。大学、大学院という新たな環境、新たなステージでの勉学を進める中で、予想もしない事態に陥り、戸惑い、躓くこともあるでしょう。過去の環境に戻りたい、と後ろ向きになることすらあるかもしれません。
しかし過去を大切にしつつも、新しい目標に向け直向きな努力を重ねる過程なくして、個人としての成長は望めません。さながら、スポーツ選手が、過去の成績を超えるため厳しい練習に黙々と打ち込むように。芸術家が、観る者の心を揺さぶる作品を生み出すため一人アトリエで苦悩するように。エンジニアが、より効率的な機器を製作するため地道な実験を繰り返すように。料理人が、お客様一人一人に喜んでもらうため新たなメニューを練り上げるように。そう、自らが自らを越えなければならないのです。
地動説で著名なイタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイは「人にものを教えることはできない。自ら気づく手助けができるだけだ」という言葉を残していますが、本学をはじめあらゆる教育機関も同様です。自律的に学業を修める「学生」として、皆さんの意志で主体的に行動されることを願っています。
過酷な受験勉強を終え、一息つきたいという気持ちもわかります。もちろん一時の休息は必要です。しかし皆さんは、まだ何者でもありません。何かを成し遂げる可能性を秘め、この学び舎で成長することを望み、入学してこられた。今は始まりの段階と言えます。
大空を飛ぶためには、風を受ける翼を大きくしなければなりません。大地を蹴りあげる脚を、外敵を察知する目を、飛び続けるための強靭な体を身に付けなければなりません。しかし雄々しく大空を羽ばたいた時、今とは全く違う景色が広がっているのです。
一日24時間という限られた時間をどう使うか。社会で活躍する将来の自分の姿を思い描き、より良い選択をしてほしいと願っています。その選択ができると期待される皆さんを、本日お迎えできたことを学長として嬉しく思います。
結びに、古代ギリシャの哲人アリストテレスの言葉を紹介いたします。The roots of education are bitter, but the fruit is sweet. 「教育の根は苦い、しかしその果実は甘い」
皆さんが本学の一員としての誇りと自覚を胸に有意義な学生時代を送り、本学から社会、そして世界で活躍することを祈念し、告辞といたします。
本日は誠におめでとうございます。
平成31年4月3日
国立大学法人佐賀大学長 宮﨑 耕治
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